Book-long-A

□ライバル
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爆豪にだけは負けたくない。気づけば常にそんな気持ちが心にあった。初めて出会った入試のときからどうも分かり合えない彼は、いつしか私の中で『ライバル』という位置づけになっていた。

突っかかってくるから気にくわない、という理由だけではない。自分の中で、すでに彼を“認めている”のだ。パワー、スピード、スタミナ、頭脳、精神力、個性、センス。あのひん曲がった性格以外、爆豪のステータスは完璧だった。

自分が彼を上回っているとは正直思えない。私の個性は誰かに頼らなければ力を発揮出来ないのだから。そして彼は上昇志向も高く、1番であることにこだわりを持った完璧主義者だ。見えないところで努力をしているに違いない。

でも、だからこそ私は爆豪をライバルとし、負けられない相手として見ていた。努力なら私もしている。強くなろうと、日々鍛錬しているのだから。

「ちょろいな!」

そう言ってタンッタンッ!と建物を飛び越えていく爆豪。私はそのすぐ下で、建物と建物をつなぐパイプに捕縛武器を巻きつけてぶら下がるように先へ進んで行っていた。

別に隠れているわけではない。いちいち喧嘩になりそうなことを吹っかけなくてもいいと思ったから静かに距離を詰めていたのだ。だが逆にそれが裏目にでる結果となった。

「鏡見ー!!待てコラァ!!」

上空から聞こえた怒鳴り声にチラリと視線を移すと、建物と建物の間を飛び越えながら鬼のような形相でこちらを睨んでいる爆豪が目に入った。

「待つわけないじゃん」

私は彼に聞こえないようにボソリと呟いた。後方からは意外にも峰田くんが迫ってきている。〈もぎもぎ〉でビルの側面を登り降りし、直線距離を進んで来ているためだ。

そして〈硬化〉が個性の切島と、〈イヤホンジャック〉で不安視していた耳郎さんは予想通り苦戦している様子で、迷路のように入り組んだ道をただ走っているようだ。彼らの姿が見えないほど距離は離れていた。

「妨害はなしだからねー!」

何かを察知したのか、オールマイトの声が辺りに響く。私と爆豪はお互いにその答えを残念に受け止めながらも、ゴールとなる声の方向に向かって突き進んで行った。



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