Book-long-A

□運動場γ
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その日の午後。
昼休み明けの授業はヒーロー基礎学だ。A組一同は各々がコスチュームに着替え、校舎から少し離れた運動場γへ集まっていた。

「ハイ私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね、ハイ。ヒーロー基礎学ね。久しぶりだ!少年少女、元気か?!」

そう言って登場したのは、またもや筋肉が盛り上がったコスチュームに身を包んだオールマイトである。

「ヌルっと入ったな」
「久々なのにな」
「パターンが尽きたのかしら」

瀬呂や切島、梅雨ちゃんの冷たく残念そうな声が聞こえてきた。私もそれには同感である。だが、オールマイトは聞こえないのか、聞こえないフリなのか、気にせずそのまま話を進めていった。

「職場体験直後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!」

前髪を触角のようにピンッと立て、いつもと変わらない笑顔を見せるオールマイトの話を遮り、今度は飯田くんが手を上げて質問をした。

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!?」

よく見ると飯田くんだけジャージを着ている。コスチュームを修繕しているのだろうか。そんなことを考えているとオールマイトはそれに対しての答えを口にした。

「あそこは災害時の訓練になるからな。私はなんで言ったかな?そう、レース!複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯!5、6人で1組になりそれぞれ訓練を行う!私がどこかで救難信号を出したら街外から一斉スタート!誰が一番に私を助けに来てくれるかの競争だ!」

なんだか色々言っているが、要はオールマイトを目指して一位になればいい。それだけのことである。

「飯田くん、出るの?これ」

私はジャージで準備運動を始める飯田くんに、もしやと思い声をかけた。彼はまだ完治していないはずだ。

「もちろんだ!ヒーローを目指す者として、この授業を見送るほど馬鹿な話はない!」

「……そっか、怪我には気をつけてね」

伸びをする飯田くんに私は止めようか一瞬迷ったのだが、やる気満々に揺らぐ様子のない彼の目を見て、私は喉まで出かけていた言葉を飲み込んだのだった。

「よーし、じゃあ各自位置について!」

組み分け後、オールマイトの声に従い各自ぞろぞろと動き出す。レースに出る者はスタート地点へ、見学をする者は大きなモニターの前へと集まり開始の合図を待っていた。



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