Book-long-A
□お別れ
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「短い間でしたが、お世話になりました!」
私はいま、【ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ】の拠点であるマタタビ荘の前にいる。職場体験が間も無く終わりを迎えようとしているのだ。
「本当にあっという間だったね、何もやってないよ!」
ラグドールはいつものように明るく言った。そう、本当に【ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ】としての職場体験を何もやっていないため否定もフォローもできない。
「職場体験らしいことしてやれなくて悪かったわね」
そう言って少しだけ申し訳なさそうにするマンダレイに、私は笑顔で言った。
「いえ、とても良い経験になりました!自分の弱点も知れたし、キャットコンバットも習ったし」
「こんな短期間じゃ鍛えるに足らぬわ」
私の言葉に相変わらずの表情で厳しく言う虎に、私はあははと笑って流した。期間が決められていなければきっと毎日死ぬまで鍛えられることになりそうだ。私はそれを想像し気づかれないように身震いした。
「たまには遊びにおいで!ていうか、ここ手伝いに来なさい!」
ピクシーボブは腕を組んで本気とも捉えられる表情で言った。
「たくさん迷惑かけたし、心配もかけました。でもここで学んだことを必ずこれから活かします」
私は荷物を手に持ってはにかんだ。本当に良い経験をした。少しだけ自立も出来たように思える。私は深々と頭を下げお礼を言った。
「本当に、ありがとうございました!」
ゆっくりと頭を上げるとマンダレイ、ピクシーボブ、虎、ラグドールの顔を1人ずつ見て目に焼き付けていった。そして、扉の陰から覗く洸太くんにニコリと微笑みかけた。
「頑張んなよ!ミラーヘッド!」
「……はい!!」
最後に響いたマンダレイの声に、私の気持ちはしっかりと引き締まるのを感じた。
この数日間で学んだこと。それは普通なら考えられないほど貴重で、危険で、意味のある時間だった。
私はマタタビ荘が見えなくなるまで何度も振り返り、まだ包帯の巻かれた腕を大きく振って別れを告げたのだった。
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