Book-long-A

□握る手
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「ごめんなさい……消太さん……!」

私は溢れる涙をそのままに消太さんに言った。

「私が消太さんだったら、きっと同じように思います……なんでもっと止めなかったんだろうって。なんで近くに居なかったんだろうって」

私は握りしめる手に力を込め、自身のおでこにそれを押し当てた。

「私はいつも自分のことばっかり……消太さんのことを全然考えられてませんでした……。自分の感情に任せて動いて、消太さんを悲しませる。USJの一件から何も成長してない……」

消太さんは何も言わずに話を聞いている。私は呼吸を整え気持ちを落ち着かせながら、ゆっくりと口を開いた。

「もう……消太さんが悲しむような真似はしません。自分からむやみに危険に飛び込んでいくようなことは絶対に」

それは、自身への誓いでもあった。本当のところ、私のヴィラン連合への憎しみはいつ爆発してもおかしくなかったのが実態だ。きっと目の前に現れた瞬間、今回の飯田くんのように私は躊躇うことなく攻撃を仕掛けていただろう。周りが見えなくなり、自分の力も冷静に見計らえないまま。

だが、もうそんな衝動的な行動は慎まなければならない。消太さんを悲しませるようなことはこれ以上したくないのだ。

「無茶するくらいなら、俺を呼べ。俺もやるときゃやる」

消太さんは私の手を強く握り返した。その表情はいつものように少し気だるげで、優しい目をしていた。

「面会時間が終わる。俺は明日も授業があるから帰るが……説教はマンダレイにしっかりされるんだな」

私の両手のなかからゆっくりと手を引くと、消太さんは悪戯に笑いながら黒いズボンのポケットにそれを納めたのだった。




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