Book-long-A
□殺気
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「何故ひと塊りに突っ立っている?!そっちに一人逃げたはずだが!?」
「エンデヴァーさん!」
少し離れた場所から聞こえた声の主は、上半身を炎熱に包んだエンデヴァーだった。
「して……その男はまさかの……ヒーロー殺し!!」
すぐさま状況を読んだエンデヴァーは、炎を燃やしたてこちらに向かって走り出した。
「エンデヴァー……」
どこかフラフラとしているヒーロー殺しだったが、その殺気と威圧感は先ほどの路地裏と比べて大差はなかった。
「贋物……正さねば……誰かが血に染まらねば……英雄を取り戻さねば!!」
大差がないなんて嘘だった。背筋の凍るほどの殺気が全身を包み、ゾワッと背中に虫酸が走った。
「来い、来てみろ贋物ども。俺を殺していいのはオールマイトだけだ!」
ジリジリと近づくヒーロー殺し。死を想像させるほどの殺気。それらすべてに私や轟、飯田くんに緑谷は全員冷や汗を掻きながら尻餅をついた。足に力が入らない。近づいちゃダメだと、すぐに察することができた。
だが、逆にヒーロー殺しがそれ以上近づくことはなかった。
「気を……失ってる……」
みんなが蒼白する中、ヒーロー殺しは立ったまま動かなくなっていた。
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結局、その後ヒーロー殺しが動くことはなかった。後から聞いた話だが、この時ヒーロー殺しは折れた肋骨が肺に刺さっていたそうだ。そのままエンデヴァー含むヒーロー達と警察により取り押さえられ、どこかへと連れて行かれたのだった。
私達はそのまま救急車で近くの保須総合病院まで運ばれた。病院に到着すると、そこにはすでに虎とラグドールが待っていた。
勝手な行動をとったのは私であり、無茶をしたのも私だ。それなのに、二人の表情は申し訳なさそうに曇っていた。
「鏡子、すまなかった。完全に我々の監督不行届だ」
すべての話を聞いたのだろうか。虎は悔しそうな様子で言った。ラグドールも、いつものような笑顔はない。そんな二人を見ていたら、私も勝手な行動をとったことに申し訳なさを感じていた。
「すみません……私も……勝手なことして」
私はそのまま救急治療室へと入っていった。あまりに大袈裟だ。そんな大きな怪我はない。飯田くんや緑谷、轟ならまだしも私まで治療する必要なんてないのに。
そう考えながら私は極度の疲労からか、それとも安心感からか、目を閉じるとあっという間に意識を失ってしまった。
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