『文豪ストレイドッグス』

□『第3話』
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敦は考えた。考えたのだが、どうしても乱菊は聞いていいのか迷うものしか出てこないし、太宰に至っては何も浮かばない。


「乱菊さんは、お、花魁とか…?」


キャバ嬢は何か違うし、風俗なんて言えたものではない。迷いに迷った挙げ句、花魁をチョイスする敦に一瞬固まる。


『…花魁って、どこの時代の人かな?私、そんな老けてないよ。』


「す、す…すみませんでした!!」


冒頭の谷崎と同じ謝罪をする敦に国木田が助け船を出す。


「諦めろ。こいつらの前職は、探偵社七不思議の一つでもある。」


「確か、最初に当てられた人に賞金が出るんですよね。」


谷崎の賞金という言葉に敦の目の色が変わった。


デタラメに職業を出していくが、どれもハズレだ。


「私はこの件に関して嘘はつかないよ。何といっても乱菊ちゃんに初めて会ったのも前の職場だったからね。」


「お2人は、同じ職業だったんですか?」


敦の質問に首をふる太宰。


「ちがうよ。…あぁ、最初に会った時のビンタは最高だったし、あの時の乱菊ちゃんの泣き顔程綺麗なものはないよ。もう一度見たいと言ったら見せてくれるかい?」


恍惚とした表情で乱菊を見つめる太宰に一同はドン引きと共に少しの恐怖を感じた。


『本当に悪趣味。次は頬だけじゃ済まないで心臓を抉り取ってしまうかもしれないよ。』


何でもないような雰囲気で言う乱菊の方が怖い。


そこへ、谷崎に一本の依頼の電話が入った。


「さあ、仕事の時間だ。私たちの過去の職業当てゲームは、また次の機会に。」


一瞬で仕事モードに変わった太宰を筆頭に依頼人の待つ事務所に向かう。


*****


「調査のご依頼と伺っておりますが、一体どのようなご用件でしょうか。」


谷崎の目の前にあるソファーに座るのは依頼人である金髪の女性。


しかし、依頼人が答える前に彼女の手を握り、跪くのは太宰という不届き者。


「美しい!睡蓮の花のごとき儚く、そして可憐なお嬢さんだ。どうか私と心中してくれないだろ…ぐえ!」


言い終わる前に国木田が制裁の拳を与える。


「あー、お騒がせしました。今のは気にせず、お話しください。」


太宰を引きずりドアの向こうに消えていく国木田。その向こう側から聞こえてくる音に一瞬空気が固まったのだった。
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