『文豪ストレイドッグス』

□『第3話』
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『す、す…すみませんでした!!』


武装探偵社、谷崎潤一郎の謝罪。


探偵社の下にある喫茶店で谷崎は敦に向かって誠心誠意を込めて謝罪をしていた。


何しろこの場面は入社式直後であって、いくら演技でも彼の良心が痛んだのだろう。


その隣にいる妹のナオミは谷崎を襲う勢いで抱きついている。その様子には本当に兄妹なのか疑わしいところもあるが、これが平常なので何も言わない。


「こいつらについては深く追及するな。」


国木田の言葉に、敦───空気を読む。


「小僧、貴様も今日から探偵社の一員。社の看板を汚すような真似はするなよ。俺もその他の皆もその事だけは徹底している。な?太宰。」


太宰に同意を求めようと、彼の座っているカウンターに視線を移す国木田。


「か弱い華奢なこの指で私の首を絞めてくれないかい?」


振り向いた先には従業員の女性を訳のわからない言葉で口説いている太宰の姿。国木田の額に青筋が浮かび上がり、せいっ!という一声と共に沈められる太宰。言っておくが、何も太宰は物理的に沈められたのではない、ただの比喩だ。


「言ってる側から社の看板を汚すな!!貴様というやつはいつもいつも…」


『あらやだ、治くんったら。彼女の華奢な指よりも独歩のゴツい指で首を絞めてもらった方が夢が叶うんじゃない?』


乱菊の口元は笑っているが、如何せん目が笑っていないので冗談にも聞こえず只々怖い。


そんなやり取りを覚めた目で見ていた敦はふとした疑問を口にだした。


「お3方は、探偵社に入る前に何をしていたんですか?」


「当ててごらん?何、定番のゲームなのだよ。」


先程まで国木田と騒いでいた太宰は椅子に座り直し、質問を質問で返す。


ゲームといわれてもピンと来ていない敦に乱菊が付け足して答える。


「新入りは先輩の前の職業を当てるのよ。探偵修行の一貫でもあるの。」


乱菊の話を聞いて納得した敦は探偵社員の顔を見つめて、前の職業を考えた。谷崎とナオミは服装と勘から学生だったという正解を出した敦に太宰は国木田の前職を問う。


国木田は自分の前職のなんてどうでもいいと豪語するが、あっさりと数学の教師とばらされた。


「じゃあ、乱菊ちゃんと私は?」
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