『ちはやふる』

□『第3話』
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ついにやってきました。高校選手権予選!


奏の母、利恵子がハートを飛ばしながら太一の着付けをしていく。


『皆、袴で出るの?!いいなー!…千早、似合ってる、可愛いよ。』


「何言ってるんですか、千咲先生の分もあります!先生は凄い美形だから、シンプルな着物も着こなせると思って大人っぽいものにしました!」


『かなちゃん、大好き!』


奏に抱きつく千咲は、誰が見ても教師に見えない。


***


「あの方、新しい先生で千早ちゃんのお姉さんらしいわね。綺麗だし、随分と可愛らしい人。真島くんがつい目で追っちゃうのもわかるわ。」


「…利恵子さん、からかわないでください。」


息子を見るような目から視線を反らす。


『見て!太一くん、どう?かなちゃんに着付けてもらったの。』


黒と白の矢絣模様の着物に、下に行くにつれ赤から白のグラデーションになっている袴。


シンプルだが、とても上品でそれを着た彼女は、太一の目には女神のように綺麗に映った。


1試合目、オーダーは2年生の駒野以外と菫。2試合目は、駒野と奏、筑波と菫が交代して、着々と勝ちを取った。


『菫ちゃん、筑波くん、お疲れ!』


二人同時に抱きしめたら、菫はマスカラが取れるとか言いつつも嬉しそうにしてて、筑波にいたっては鼻の下を伸ばしている。


二人を離すと、千早が突進してくるように抱きついてきた。褒めて頭を撫でると嬉しそうに笑う可愛い妹。


『千早も25枚パーフェクトなんて、流石ね。…太一くんは?来ないの?』


「っ、行きませんよ!!」


三試合目、相手校の顧問は千早、太一が所属する白波会のエース坪口さんだ。オーダーに悩む太一。


そんな太一に、応援に来ていた原田先生は、個人戦は団体戦、団体戦は個人戦というアドバイスをした。


その真意がわからないまま始まった三回戦目。


太一は周りが見えすぎる。


相手の狙い札が連続で読まれるなんて、やっぱり運がない。しかし、太一は運がない事を言い訳にしないで、実力だと逃げずに思っているのだ。


この状況から考えられる事は千咲でもわかる。


努力を嘲笑うかのように取りつくセンスの差という思いが纏いつくだろう。


『宮内先生、こっちです。』


兼任しているテニス部の試合が終わって、駆けつけてきた宮内先生を呼ぶ。


「千咲先生、着物似合ってます。…それにしてもうちの子達だけ蒸されてますね。」


太一の真上のエアコンだけ止まっていて、凄い汗の量。


「すみません!誰かタオル…」


太一が振り向いた瞬間、タオルが数枚降ってきた。


利恵子、宮内先生、菫、白波会の女性陣、千早、そして千咲。


「ありがとうございます。」


綺麗に重ねてタオルを脇に置く。使ったのは千咲のタオル。
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