『ダイヤのA』
□『第2話』
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『一也くんって丹波さんと仲悪いの?』
隣にいた倉持はヒャハハと独特な笑い声をあげる。
「ひでぇなぁ、純玲チャン!」
泣き真似をする御幸を無視して言葉を続ける。
「御幸うるせぇよ!そーいえば純玲、今日の試合見てどうだったよ?」
『青道の課題は、絶対的エースの不在ね。でも倉持自身の課題はもっとバットに球を当てて確実に塁に出ることね。』
倉持は、お前よく見てんな…と、驚く。自分から聞いといて、何を言ってんだか。
この青道の課題は前々から思っていた事だったが、今日で確信した。
おそらく、明日からレギュラー選考の練習になるだろう。
夜、食堂に行くと降谷くんが一也くんと栄純の間に無理やり座っているのが見えた。
「御幸先輩。自分は明日、誰にも打たせるつもりはありません。そうしたら、僕の球、受けてもらえますか?」
…この子、凄い。
そんな言葉に先輩方が怒るのも仕方がない。しかし、先輩達に凄まれても、彼は動じてないようだった。
『先輩方、みっともないですよ。そういうのは明日のプレーでしてください。ね?丹波さん。』
いきなり来た純玲が丹波に話しを振ったので、一斉に丹波へと視線が集まる。
その中で、3人ほど自分に視線を向けている事に気づいていたが、あえてそちらは見ない。
「…あたりまえだ。」
丹波の言葉に満足げに微笑むと、大体の人が顔を赤く染める。
そこで御幸を見るとみごとに視線が交わった。
「お!やっと俺の熱い視線に気づいたか。」
ふざける御幸に苦笑していると、御幸の隣で固まっていた沢村が大声をあげた。
「純玲?!!!な、な、何でここに?!」
『栄純、久しぶり。ちょっと話そうか。』
それだけ言って食堂を出ると、少し遅れて栄純も出てきた。
ベンチに座って隣を軽く叩くと、少し戸惑いながらも栄純は座った。
『4年ぶりくらい?大きくなったね。』
アメリカに行く前まで同じくらいの身長だったが、今では栄純の方が大きい。
「お、おう。」
『私も今年帰ってきて、編入したの。礼ちゃんに誘われたからね。栄純もでしょ?どう?青道は。』
「とにかく、すげーよ。中学までとは全然違う。でも、あのグラサンに練習参加させてもらえねえけどな!!」
最後の方は怒り気味に言った栄純だったが、やっぱり青道はすごいと感じ取ったようだ。
『フフッ、がんばってね。私も一緒に支えていくから。』
私の言葉に栄純は満面の笑みで答える。
「おう!!あ、純玲!!」
思い出したように栄純が声を上げる。
「おかえり!」
一瞬、瞠目した後すぐに笑みがこぼれた。
『ただいま!』
それから、栄純を撫でまわしたりなどじゃれ合いながらたくさん話しをした。
食堂で私と栄純がどういう関係なのか話題になっていた事も、一也くんが陰から見ていた事も知らなかった。