旅人の休息2

□儚い思い
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何時からだろう…
ふと窓の外を見ると何時も居る女の人
その人は何時も同じ時間に現れては消える
毎日、毎日同じで気になった
だからだろうか

悠「あの、えっと…。」
咲夜「…はい?」
しまった、何て声かければ良いか分かんないのに
そう思っても後の祭りで
咲夜「あなたは…?」
悠「あ、っと…そこの家に住んでます。」
変な返事しか出来なかったけど、その人は気にすることなく微笑んでいた

それからと言うもの、その女性に会うために時間になる少し前からその場所で待つようになった
咲夜「あ、悠太くん。もう来てたのね。」
悠「どうも、咲夜さん。」
初めて会ったときから2週間が過ぎた
お互いに沢山のことを話した
そんな中、自分の中で芽生える感情に段々気づき始めてた
この人が、咲夜さんが好きだと
でも、何となく分かってることがあった
ここは誰も来ない場所だから、気付きにくかったけど
この人が実はもう…
でも、其の事実に目を向けるのが怖かった

ある日、何時も通りにあの場所へ向かう
珍しいことに咲夜の方が早く着いていて、少し駆け足で近付く
悠「咲夜さん、今日はどうかしたんですか?」
咲夜「…悠太くん、あのね。私はもう随分前に死んでるの。」
そう話が始まった
嫌な予感しかしなかった
咲夜「近所に住む方達がね、迷惑なんだって。だからね、さよならしなくちゃ。」
悠「……そんなの、嫌です。」
困らせるのは分かってるけど、離れたくはなかった
咲夜「う〜ん、私も寂しいけど…。でもね、そろそろ行かなきゃ。」
そう言って笑った咲夜さんに、咄嗟に抱き着いた
このまま離せば居なくなる気がして
咲夜「悠太くん…。大丈夫、ずっと此処に居るよ。ずっと…。」
そう言った咲夜さんの顔が霞んで見えた
瞼が閉じる
嫌だ、駄目だ、目を閉じたらもう…
そう思うのに瞼が閉じるのを止められなかった
目を覚ますとそこは自分の家で
周りには誰も居なかった
悠「…嘘つき。ずっと居るって言ったのに。」

それから彼女があそこに来ることはなかった
ただそこに居たことを主張するかのように、勿忘草が咲き誇っていた
 

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