SHORT

□別れ際
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離したくない

紅を抱き締めながら
この腕をなかなか解くことができずにいる

キスしたい
もっと触れたい

紅がもぞもぞと動くから
俺は仕方なく
回した腕を緩めた

俺の胸から顔をあげる紅
こんな顔だったか?
こんな女っぽい顔だったか?

俺を見上げる目は
優しくて潤んでいる
照れたように眉を下げ
押し付けられていたこともあってか
頬が淡く色付いていて
ポテッとした唇が
少しだけ開いている

キスしたい
再びその欲望に駆られたとき
紅が目を閉じた

それを合図に
唇を重ねる

重ねるだけのキスをして
二人見つめ合う

それからまた抱き締め合う

俺は紅の髪を何度も撫でた

「離したくないよい」
そう言うと
紅は答えるかのように
背中に回した腕に力を込める

「かわいいない、紅」
「マルコ…」
再び合わさった唇は
今度は熱を持ち
深く合わさる
紅の頬から首筋に手を置き
離れないように
引き寄せながら
「ん…ん…」
唇を離すと
「なんか、変な声出ちゃった」
と紅が恥ずかしそうに
困ったように笑った

「あー!クソ…」
「え?」
「どんどん離れがたくなるよい」

船出の時間が迫っている
船に戻らなければ…
けれど、今この温もりを手放したら
次はいつになるだろう
その時には
紅はすでに他の誰かの物かもしれない

「紅…」
自分の声がこんなに切なく掠れるとは
思ってもみなかった
「一緒に…」
そう言いかけると
紅の唇に塞がれる
俺の顔を両手で包みキスすると、
その両手は俺の胸を押し返した
「行って」

2.3歩後ずさると
俺は意を決した
「あぁ、行ってくるよい」

紅はいつもの様に
笑って手を振る
「行ってらっしゃい、マルコ」

そして俺は
船までの間に
白ひげ海賊団一番隊隊長に戻るのだった

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