SHORT

□Hug
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半年ぶりの島への寄港で
いつもは賑やかな食堂も
今日はガランとしている。

みんな、昨日は陸に上がって思い思いに過ごしそのまま船に戻る者は少なかったんだろう。

フライパンに卵を落とし脇でベーコンを焼く。
湯剥きしたトマトを切ろうとすると
「いい匂いだよい。」
後ろから優しい低音が響く。
あたしは振り向いてコーヒーを注いだカップを手渡した。
「おはよう。マルコ」
「ずいぶんと早起きだねい。紅」
マルコはコーヒーを一口飲むとまだ眠そうにそう言った。
「まだ寝てても良かったのに」
あたしは向き直りトマトを切る。

ふわっといつものマルコの香りがしたかと思うとマルコの腕があたしの腰に絡まった。
マルコはあたしの耳に唇を寄せ
「隣がさみしくてねい。」
とつぶやいた。
あたしは肩口にあるマルコの顔に頭を寄せる。
「お腹すいちゃったんだもん。」
「昨日は紅が激しかったからねい。」
「ばか」
あたしは軽く頭でマルコを小突いた。
マルコはニヤリと笑って
あたしの首や肩にキスを落とす。
「ちょっとぉ、くすぐったいから」
肩をすぼめるあたしに構わず
マルコはキスを繰り返す。

たまらずあたしはマルコに腰を抱かれたままその腕のなかで反転してマルコと向き合う。
「紅 今日も朝からセクシーだよい。」
あたしはマルコの唇にキスをして首に手を回す。
「マルコの匂い、大好きよ。」
そしてそのキスはだんだんと深くなる。


「なんか焦げくせーな」
言いながらサッチが食堂へ入ってくる。
キッチンでいちゃつく二人を見るなり
「お前ら!俺の聖域でいちゃつくんじゃねーよ!ちくしょう!」
と声を荒げた。

「うるせーのが来たない。」
マルコはチラッとサッチを見てため息をつく。
「やだ、焦げちゃった。ごめんね、サッチ。食べたら行くから。」
あたしは笑いながら手早く皿にベーコンやら卵やらを載せた。
「いや、部屋で食うよい。」
横からマルコが皿を取りあたしの腰を抱いて歩き出す。

サッチの横を通るときに
「また振られて戻ってきたのかよい。」
とニヤリと笑って憎まれ口をたたくマルコ。
「うるせー!ここは俺の聖域だぁ!」
「もう、マルコ。サッチがかわいそうでしょ。」
「おい紅!哀れむんじゃねぇよ!」
わめくサッチの声を聞きながら
あたしたちは二人の部屋へ戻ったのだった

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