本棚  弐

□楽園の彼方
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カラ松・おそ松ともに女性との絡みあり。
おそ松に限り、チラッと女性との濡れ場がありますが、基本はおそカラです。

















「あの……松野くん。
好きです
私と、付き合ってください!」


部活後、体育館裏に呼び出された俺を待っていたのは同じ部に所属している一つ上の先輩だった。
マネージャーである彼女は、同級生からも先輩達からも人気のある人。
長い髪の毛を風になびかせながら、赤い顔を隠すように俯く姿はとても庇護欲をそそる。
愛らしくも可愛らしい女性の姿だ。


「あ……えっと……」
「あのッ友達からでもいいんで!
返事も!今すぐじゃなくていいから!
ゆっくり!ゆっくり考えて…ほしいです」
「……あ……はい……」

先輩はそれだけ言うと走り去ってしまった。
すると待ち構えていたように物陰から現れたのは、同じ部の友人二人。

「お前……先輩から告白されといて何しけた面してんだよ!
あれは即オッケーだろ!」
「ばぁか、松野は彼女いんだよ
知らねぇの?」
「え!?マジ!?松野、彼女いんの?」

「いや……いないよ」

友人達の言葉に嫌な汗が流れる。

「松野は秘密主義だもんなぁ
でも絶対居る!
それも年上とみた!」
「え、なんで?なんで?」
「俺、この前さぁ…」
「いいから、早く帰るぞ」


遮るように歩き出せば、二人も渋々歩き出す。
彼女なんかじゃない。
女ですらない。










両親は、俺が八歳のときに死んだ。
けれど、俺にとってそれはなんでもないこと。

なぜなら、親以上に身近にいて愛情をかけてくれた兄は生きていたから。
10歳上の兄は、優しく頼りになって力持ちで男らしくてカッコイイ。
俺の自慢の兄。
俺の中にある愛情のすべては兄がくれたもの。
兄は俺にとってのすべてで、絶対だった。
だからそんな兄が俺を抱くことも、愛情表現の一つとして疑わなかった。
兄の与えてくれる快感は心地好くて、抱かれる度に兄が好きになっていった。
兄に抱かれることを求めて。
兄に欲情してもらえるように。
兄が喜んでくれるように。
色んなことをすすんでした。

けれど中学もあと一年で卒業と言う頃、俺は思った。
このままでいいのだろうか、と。
友人との体験の差は歴然で、言わなくても妙な疎外感をいつも感じていた。
その頃から同級生や先輩、後輩に告白されるようになって、思いは強くなっていった。
あれから一年以上月日は流れたけれど、俺と兄との関係は変わっていない。

だから決めた。
今日言おう。
兄に、自分の気持ちを伝えるんだ。
優しい兄なら、きっといつものように笑っていいよといってくれるはずだから。










「おーい、カラ松〜?風呂入らないの?」
「ーーッ!!兄さん…」

名前を呼ばれ顔をあげれば、兄の顔のドアップ。
どうやら意気込み過ぎて居眠りしてしまっていたらしい。

「どったの〜?
ぼうっとしちゃって、眠いなら兄ちゃんがベッドに連れていってやろうか?」
「…、っ…あ……」

連れていってやる、という割りには俺に覆い被さる兄。
大きな手で首筋をなぞられ、無条件で身体が反応する。
それを見た兄はにっこりと笑い、顔を近づけてきた。

あ、これエッチするんだ。
早く……
早く言わないと…
早く……止めないと………

「…っ…にい、さん……」
「ん〜〜?なぁに?」

厚い胸板を少し押せば、顔が見える距離になった。


「あの……俺…もう、こういうこと……したくない…っ」
「………ん?」
「か、彼女できたから!…兄さんと…エッチ、しないッ…」
「…………………」

できたわけじゃないけど、こうでも言わなきゃ踏ん切りがつかなくて。
つい口をついて出た。
そして、黙る兄をなんとなく見ることができずにいると、急に頭を撫でられた。
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