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□誰が天使だって?
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青天の霹靂とは、まさにこのことだ。





「………十四松?」



いつも大きな口を開けてどこを見ているのかわからない三つ下の弟。



俺は今、その天使のような愛らしい弟に


ーーー押し倒されていた。















その日は、おそ松と一松が何やら怪しげな薬を知り合いの博士から貰ってきたとか、話していた。


さらにチョロ松とトド松を巻き込み、

お前が飲めよ、いやお前が…

と押し付けあいをしばらくしていたが、飽きたのかみな外出してしまった。



ポツンと部屋の片隅に残された怪しげな瓶。


俺はといえば、兄弟たちのそんな戯れも瓶のことも気にせず鏡を見ていた。



すると一時間もしないうちに、バッドを片手に帰宅した十四松が何を思ったのか、瓶を手に取り…。



「何これ何これ〜?

ジュース?誰の?

いっただきま〜す!」


「あ……」


止める隙もなく、ジュース一本分ぐらいの量の液体を一気に飲み干した。


そしていつものように「うんまぁあ!」と叫ぶ十四松。



俺は内心、大丈夫なのだろうかと冷や冷やしながら見ていたから、その反応を見て少しホッとしていた。



なんだ…、危ないものかと思ったらなんでもなかったのか…


胸を撫で下ろし、再度鏡に映る自分を見ていると、すぐ近くに感じる気配。


「…………?」



見れば、十四松が俺を見下ろしていた。


ジイと焦点のあった二つの瞳と目が合い、本能的に恐怖を感じた。

けれど理性がそれを抑え込む。


「ん〜?どうしたんだぁ?」


「……ーーーーー」


いつもの調子で話すと、ぼそりと音が返ってくる。


聞き取れない音量に、首を傾げ聞き返そうとした瞬間……


「……すまない、よく聞こえなかった

どうし、ーーーーッッ!!??」


勢いよく押し倒された。









そして、今に至る。



加減なしに身体を叩きつけるように倒され、痛みに動きが鈍っているところに、十四松は覆い被さってきた。


「十四松……いきなりなんなんだ

プロレスごっこ、…か?………ッッ!?」


にわかに感じる焦りを誤魔化すように、至って平静を装い言う。


だが、ジーンズ越しに当たる熱く硬いものに一瞬で身体が強張った。


勃って…る………?

なぜ……?

どうして……?


まるでわざと当ててきているかのような動きに鳥肌が立つ。


それでも十四松を突き飛ばしたりしないのは、他でもない性に疎く純粋で可愛い十四松だからだ。




きっと気づいていないに違いない。


何を妙な勘繰りをしているんだ。


十四松に限って、こんなイタズラあり得るわけない。


自分を叱咤し、向き直るも、十四松の言葉ですべて打ち砕かれた。



「カラ松にーさん、セックスしよ」


「……………え?」


「セックスだよ

はい、脱ぎ脱ぎして〜」


「うわっ、やめろ!こらっ!」



戸惑う俺など関係なく、あっさりと下半身の衣服は剥ぎ取られた。

そして手短にあったローションを大量にかけると、ガチガチに勃起したものを宛がわれた。


「……ッ!!!!」


銭湯で見慣れたものとは全く違う形に、ヒッと喉がなる。


な、なんて、膨張率なんだ……ビッグマグナム…………


ってそれどころじゃないぞ俺!
リアルな貞操の危機!



明らかに本気な十四松を見て、覚悟を決める。


“すまない十四松”と心の中で謝り、勢いよく蹴りを入れた…………はずだった。



「ざ〜んねん、にーさん」


「……ッ」



けれど、俺の足は十四松の手により簡単に掴まれ、大きく開脚させられた。


「ホント、にーさんは甘いんだから〜

こ〜んな軽いキックじゃダメだよ〜

逃げるための最後のチャンスだったのに、残念だったね



そんなんだから、僕に喰べられちゃうんだよ?」
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