ALIA's CARNIVAL! -Blight Sky-
□プロローグ
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*序章*
4月17日(日)桜色の街
サアアァァ-----。
春風に乗って、桜の花びらが街を駆け抜けていく。
降り立った自分の故郷は、かつての街並みからは、想像もできない光景となっていたため、俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
真「この街もずいぶんと立派になったなぁ.....。」
思わず見上げてしまう高層ビル。
途切れることなく車が走り続けている、大通り。
真「さすがは大都市といったところか・・・」
すっかり変わり果てた地元に、俺、矢来真は感嘆の声を漏らす。
そのまま、駅前広場から北へと伸びる大通りに沿って歩いていく。
真「いい眺めだ。これぞ桜雲という名にふさわしい桜の景色だな・・・」
長い冬はもう明けた。
春という新生活の季節への期待に、俺 は心を踊らせる。
出会いと別れの季節でもある春。
この街ではどんな出会いが待っているのだろうか。
真「そういえば、かりんはどうしてるかな。」
そう、俺と特に仲のよかった幼馴染みである、才城かりん。
出会いといえば、この街に住む幼馴染みたちとの再会だ。
俺の記憶の中のかりんは、どこへいくにも俺の側を離れようとしない甘えん坊な女の子だったが元気にしているだろうか。
俺は鞄から、一封の封筒を取り出す。
その中には、かりんの手書きと思われる手紙が一通と、桜雲区の地図が添えられていた。
何年も連絡していなかったというのに突然桜雲に戻ることを告げたら、かりんはこの手紙だけを送ってきた。
そしてなぜか、手紙にはハンカチや筆記用具を忘れていないかとか、男性としての身なりや仕草についてなど、細かいことが書かれている。
真「ふふ・・・昔と変わらず元気そうだ。仲良くやれるといいな。」
長く離れていたこともあって、かりんがあの頃のままでいてくれることを嬉しく思う。
真「さてと、感傷にばかり浸っていられないな。待ち合わせ場所までもうすぐだ。」
****
そうしてたどり着いたのが、ここ桜雲台学院。
[緑と桜と未来の都市]を目指す桜雲の名に恥じない大きな学院だった。
パンフレットによると、桜雲に咲く桜の花は、品種改良によって通常の桜よりも開花期間が長いらしい。
そして、その品種改良を行ったのが桜雲台学院の卒業生だと言うのだから驚きだ。
他にも著名な政治家や技術者を、数多く輩出している立派な学院らしいが・・・。
真「しかし、生徒による自治を掲げた教育環境か・・・」
そういった特殊な環境が、優秀な人材を育てるのに一役買っているのだろう。
それ以外にも、パンフレットには興味を引くことが書いてあった。
真「人の歴史や潜在能力を研究する[未来科学]・・・」
桜雲区の発展を目的に、未来と科学をテーマにしているらしい。
つまりは桜雲区と桜雲台学院は、二人三脚な関係ってことだろう。
???「ニャー」
見れば校門の塀の上を、ぽてぽてっと歩く、白猫の姿があった。
白猫は俺を見ると、その、可愛らしいのか不格好なのか分からない顔で小首を傾げた。
真「変わった猫だなあ」
野良猫・・・にしては小綺麗。
首輪をつけているから、飼い猫ではあるらしい。
そしてなぜか、パンをくわえていた。どこからか盗んできたのだろうか。
白猫「ニャー」
猫はぴょこんと地面降りると、そのまま学院の中へと消えていってしまった。
まるで俺の顔を見に来たかのようだった。
猫が去っていった方を俺がぼーっとしながら見ていると・・・
???「よ、君が転校生か」
真「あ、はいそうで・・・って行方さん!?」
行方「ハハハ、ああ、久しぶりだな、真」
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*行方静蔵(なめかたせいぞう)*
桜雲台学院の教師。性格は軽やかで生徒の受けも良いナイスミドル。今回の転校に際して相談に乗ってもらった。
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古くからの義父の友人で、俺も昔会ったことがあるのを憶えている。
真「いつも義父がお世話になってます。」
少し前にこの街で見つかった古代遺産を調査する!といきなり言い出した義父に半ば無理矢理につれてこられた俺は地元である桜雲に戻ることとなったのだ。
行方「真、お前も大変だっただろう」
真「いえ、義父に振り回されるのには慣れてますから」
行方「はっはっは・・・そうだったな。まあお互い堅苦しいのは抜きでいこう」
真「そうですね、その方が助かります」
行方「桜雲は7年ぶりくらいだったか?どうだ、見違えただろう?」
真「ええ、こんなに街が発展しているなんて。桜の花も聞いていた以上ですね」
行方「そうだな。私もここへ赴任して長いわけじゃないが、今年は例年以上の咲きっぷりらしいぞ」
真「へぇ、そうなんですか」
特に、未桜公園(みさくらこうえん)の桜並木辺りがおすすめらしい。
行方「さてと・・・まずは学院長に挨拶へ行こう。それから転校手続きだ」
真「あ、はい、お願いします」
俺は行方さんの後に続いて桜雲台学院の門を潜る。
休日の引っ越しついでに、転校手続きまで済ませてしまおう、というのが今日の予定だった。
****
真「失礼いたしました」
バタン。
真「ふぅ・・・」
行方「・・・どうだった?」
真「はい、歓迎してくれるとのことです」
行方「そりゃあ良かった」
真「学院長のお墨付きもいただけました。あとは行方さんに聞いてくれって」
俺は学院長から判を押してもらった[入学証明書]と[1枚のカード]を行方さんに渡した。
行方「学院長からは・・・、何か言われなかったか?」
真「いえ、特には。軽く雑談を交わしたくらいです」
行方「・・・それなら問題はないが。お前の義父はこの学院設立の際の協力者だからな」
真「そうなんですか・・・。だからなのか[[君には期待している]]というような事を仰っしゃっていました。社交辞令だと思うんですが」
行方「そうかねぇ。私にはそう思えないがな。矢来は前の学校では学年首席だったのだろう?」
真「ええ、まあ・・・でもそれは買い被りすぎですよ。ただ普通に勉強していただけなので」
行方「ふむ」
真「あ、それより行方さん。同じ学年に、学院長の血縁の方がいるらしくて、良ければ手助けしてくれと頼まれました」
行方「ほう。実はな、学院長のお孫さんがこの学院に在籍しているんだ。お前と同じ学年の女子だな」
学院長のお孫さん・・・か。さぞかし気品のあるご令嬢なんだろうな。
どんな子なのかちょっと気になる。
真「一緒にいた教頭先生からは、こっちがドン引きするぐらい鬼気迫る顔で頼まれましたよ」
行方「ハハハ、教頭は少し心配性なんだ。・・・しかし、そんなことを転入生に頼むなんて珍しい。となると、本当にお前に期待をしているのかもしれん」
真「はあ・・・そうですか」
行方「よければ俺からも頼むよ。彼女、結構手のかかる子でね。教頭がいつも頭を悩ませて胃薬を飲んでいるんだ」
真「まあ、行方さんがそう仰っしゃるなら、考えておきます」
真「しかし、お孫さんを気遣うなんて学院長はお優しいんですね。物腰の柔らかい方でしたし」
行方「・・・そう見えるか?あれでも怒ると、誰も逆らえないくらい怖いぞ」
真「そんな感じはしませんでしたけど・・・」
行方「なんだかんだ言って、この大きな学院を仕切って管理している、やり手の御仁だからな」
真「・・・」
行方「若い頃は[桜雲の虎]だとか言われて、官庁やお偉い方と対峙して、桜雲のために戦っていたらしい。その頃と比べれば、今はずいぶんと丸くなったものだよ」
真「桜雲の虎ですか・・・」
行方「まあだから、学院長にだけは面倒をかけるなよ。さすがの俺も、お前の身の安全は保証はしきれない」
真「ええ、それはもちろんです」
行方「まあ、学院長から認められたのなら問題はないか。さて、あとは細かな事務手続きだ」
真「分かりました」
****
その後、職員室で書類を提出し、入学手続きを済ませた。
これで俺も、晴れて桜雲台学院の生徒になることができた。
俺はこれからの学院生活に少しばかり心を踊らせながら学院を案内してくれる行方さんの後についていった・・・。
~プロローグ 終幕~
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