短編・リク

□裏腹に、
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「ブン太はホントに甘い物好きだよね……。」


先ほどから机いっぱいに広げたお菓子を頬張るクラスメイトの丸井 ブン太は甘い物には滅法弱い。


「悪いかよ!!」


ショートケーキ、
クッキー、
ポテチ、
ポッキー、
アメ、
ガム、
チョコ、
ジュース。

山積みになったお菓子を挟んでため息をついた私。
さっきまで幸せそうにニコニコしてたのに、私の一言で少し機嫌を損ねたブン太。
そんな彼の、私は彼女。


「あんまり食べ過ぎると太っちゃうんだからね?」


私の一言に手を止めて、


「テニスで消費するから大丈夫なんだよ!!それに、葉月には関係ないだろぃ!!」


再び動かす。
うっとうしそうな物言いは最近始まった。


「真田君に怒られても知らないから。」


フン、と鼻を鳴らしてブン太はまた一つ、お菓子の袋を開ける。


「関係ねぇし………」


その一言がどれだけ私を遠ざけているのかも気付かずに、ブン太は続けた。


「お前、真田の回し者かよ。」


お菓子の甘い匂いを纏った彼は、見た目の可愛さとは裏腹。
当たり散らして行くヤマアラシ。


「だいたい何なんだよ。最近俺の事見てはため息。口を開けば真田真田。」

「は?」

「そんなに真田が良いなら、真田と付き合えばいいだろぃ!」


ムスッとしたまま、ブン太はクッキーを一つ、口へと運ぶ。
真田君が好き?
そんな訳ないのに。


「何でブン太にそんな事言われなきゃなんないの?私が付き合ってるのはブン太なのに…」


もう帰る!!とカバンを手に教室を出ようとする。


「おい、待てよ!!」


呼び止められて、素直に立ち止まる。
私はブン太の言葉を無視できない。

だから彼にとって私は、きっと都合の良い女。


「何?」


振り返ると、ブン太は私が座っていた椅子を指差し、座るように促した。


「〜…………」


溜め息を吐きながらもそこに座ると、「当然。」と言った顔で誰に貰ったのか、イチゴショートを口に運ぶ。


「まだ食べるの?」

「………」


私の質問には答えない、困った彼氏。


「何よ。嬉しそうに女の子からお菓子もらっちゃって…」


この人には小言だってきっと聞こえやしない。
だからこそはっきりと聞いてみる。


「この際聞くけど、ブン太は私とお菓子どっちが好きなの?」


すると、珍しく反応した。
ケーキを運ぶ手が止まり、ジッとこっちを見ている。
なんでここで反応するかな……。


「……………」

「考えないでよ。」


お菓子って答えても良いから、せめて即答して欲しかった。








視線を少しだけそらして、






ケーキを置いて、







手を拭いて、







真っ直ぐに私を見て、














右手が頬に触れる。














「お前に決まってるだろぃ////」


赤く染めた頬、
こちらを窺うような上目遣い、


「へ……?」









触れた唇からは苺の香りがした。
 

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