長編
□precious days 3
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ポジティブで向こう見ずな性格がいつでも私を支えてきた。
だから、これからもそうでありたいと思ってた。
第3話
先輩これはイジメですか、優しさですか
「えー今年もゴールデンウィーク中にプレ合宿を行う事になりましたー。」
今まで幸村先輩の後ろで影を潜めていた部長の久々の発言に、部員達は騒めいた。
プレ合宿。
新入生の歓迎と夏に行われる合宿のレクリエーションを兼ねた親睦会らしい。
「まあ、急な話だし基本自由参加と言う事で、参加希望者は今から配る用紙に必要事項書いて明後日までに提出ねー。遅れたら参加可能だけど、布団ナシだからー。」
なんとも適当な感じの告知とは裏腹に用意されたプリントには親御さんへの挨拶やら趣旨説明やらやたら丁寧で、普段地味だしユルいけどこの部長実はデキる人なんだな。なんて感心した。
「やー、柳君ありがとねー。こんな立派な文書にしてくれたんだー。」
感心したけど、前言撤回で。
やっぱこの部長、地味でユルくて働かない人かも。
「なあ、葉月。」
「何?」
呆れた顔で部長を眺めていると、切原君が脇腹を肘でついた。
「お前、これ来んの?」
まるで自分が参加する事は当然だと言った口ぶり。
「まあ、夏合宿の予行演習も兼ねてる訳だし、色々と勝手を知っておいた方が良いと思うし…」
「そっか。」
そっか。って何よ?
人にモノを聞いておいてそっかって。
若干イラっとして切原君に不機嫌な目を向けると、余程怖かったのか切原君はオタオタとうろたえた。
「や、別に深い意味はないんだけどさ!」
「護ってくれるんだよね?」
そう。深い意味とか、そんな事はどうでも良い。
重要なのは何があっても切原君が私を護ってくれるかと言う事。
「ま、まあな…。」
「ホントに?」
「お、おお!」
私の念押しに切原君はまだ何か言っている部長に視線を戻した。
日に日に強くなる日差しの暑さのせいか、彼の耳は真っ赤になっていた。
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