長編
□precious days 1
1ページ/3ページ
ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせーんぼんのーます!
ゆーびきった!!
幼い頃に交わした約束。
桜の花びらが舞い散る公園の、誰にも見つからない場所で、二人だけの秘密。
そんなものを未だに信じてるって言ったら、君は笑うだろうか?
「髪型よし、ネクタイよし、スカート丈…まあまあね。」
春。
それは一年で最も特別な気持ちになれる季節。
桜の花も見頃を過ぎて数日。
待ちに待った高校の入学式。
私は今日、憧れ続けた立海大附属高校に入学する。
第1話
編入生なので、お手柔らかに
「うっわー!やっぱり広いなー!」
その広大な敷地に私は思わず声を漏らした。
中学で一人暮らしなんてまだ早い、と反対され、憧れ続けた立海大附属の文字。
やっとここに通う事が出来ると思うと、これからの日々が楽しみで、希望に満ち溢れていた。
溢れているはず、だったのに…
とんだ誤算。
そりゃそうだ。
何せ立海は中学からのエスカレーター。
高校に入ったからって、友達と離れる訳でもないし、なんなら中学でできたグループがそのまま継続するのは当たり前じゃない!
初めましてから始まる素敵高校ライフを夢見た私がバカだった!!
クラスは既に出来上がったグループで楽しく会話を交わすクラスメイト達で賑わっていて、入る隙なんて微塵もない。
私は自分の席で小さくなってるしか無かった。
「なぁ、アンタ編入生?」
一人机に向かっている私の頭上からその言葉が聞こえるまでは。
「俺、切原赤也。アンタは?」
目の前の席に座った彼は、人懐っこい笑顔を見せた。
「わ、私、葉月那奈!」
「ふーん。葉月ね。アンタ、しばらく俺と一緒に居ろよ。」
友達いっぱい出来るから。と、切原君は私の頭をポンと撫でた。
「あー、切原が女の子口説いてるー。」
「え?見た事ない子だね、編入生?」
「おー。葉月那奈だって。」
魔法みたいだった。
切原君が声をかけてくれただけなのに、私の周りにクラスメイトが集まり始める。
「葉月那奈です!よろしくお願いします!」
思いがけない出来事に、声が大きくなる。
あまりにも大きな声に唖然としたクラスメイト。
「プッ…はは!葉月声デカすぎ!」
その間を埋めるように切原君が笑うと、
「もー!ビックリしちゃったじゃんー」なんて、みんなが笑った。
すごい。
すごいよ切原赤也!
「な?」
みんなが笑う中、切原君が囁いた。
切原君と居れば、これから楽しく過ごせる気がした。
.