長編
□僕らの失敗作13
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『ピンポン、』
無機質な呼鈴の音は我が家に余すこと無く響いた。
「あら、お客さん?那奈、出て!!」
夕御飯の準備をしていた母がキッチンからチラリと顔を出す。
「ん、分かった。」
正直読むどころか、何も考えずにめくっていた雑誌を机に置き、私は玄関へと向かった。
「………雅……治………」
玄関の戸を開けると、そこには部活帰りの雅治が立っていた。
気まずいのはお互い様。
雅治は視線をそらして、何も言わない。
「あら、雅治君じゃない!!」
フリーズした私達を他所に、母さんは嬉しそうに玄関へと駆けてくる。
「久しぶりね〜、大きくなって!!」
甥っ子にあったような言い方には、気を遣うと言う考えが微塵も見られなかった。
「何ボサッとつっ立ってんの?早く入りなさいよ。」
母さんは、私達に何があったかなんて知らない………。
「……取り敢えず、上がって………。」
私は普通を装い、雅治もそれに気づいたのか何も言わずに私の後について来た。
雅治にキスされたのは今朝の事。
あんな事があったのに、私はまだ雅治を信じようとしていた。
だって、私達が付き合う事になったあの日、雅治は確かに明日香の事を好きだったから。
大切にしていたから。
それだけは本当だから。
第十三話
好き