長編
□僕らの失敗作5
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「へ………?」
ブン太の言葉が思考を停止させた。
「夢、見てたんだ……」
涙が止まって、全身の力が抜けたみたいに頼りない。
ブン太は私を椅子に座らせて、ポツリポツリと話し始めた。
「その夢で俺は野村と付き合ってた。」
分からない。
分かりたくない。
「那奈はいなかった。」
理解したら終わりだ。
脳が警報を鳴らしている。
今すぐ聴覚を断てと。
「……別れよう…………」
瞬間、全てが壊れたみたいに、口が、表情が、体が動かなくなる。
声が出ない。
気持ちとは裏腹に、脳は全てを理解した。
涙だけが溢れて、頬を伝う。
「ごめん、那奈……」
まだ間に合う?
何か言葉を。
ブン太の言葉を遮る言葉を。
否定する、
拒否する言葉を。
「お前、要らねぇから。」
ブン太は、目を合わせてくれなかった。
第五話
崩壊