長編

□僕らの失敗作5
1ページ/3ページ


「へ………?」


ブン太の言葉が思考を停止させた。


「夢、見てたんだ……」


涙が止まって、全身の力が抜けたみたいに頼りない。
ブン太は私を椅子に座らせて、ポツリポツリと話し始めた。


「その夢で俺は野村と付き合ってた。」


分からない。
分かりたくない。


「那奈はいなかった。」


理解したら終わりだ。

脳が警報を鳴らしている。
今すぐ聴覚を断てと。


「……別れよう…………」


瞬間、全てが壊れたみたいに、口が、表情が、体が動かなくなる。
声が出ない。

気持ちとは裏腹に、脳は全てを理解した。

涙だけが溢れて、頬を伝う。


「ごめん、那奈……」


まだ間に合う?

何か言葉を。

ブン太の言葉を遮る言葉を。

否定する、

拒否する言葉を。


「お前、要らねぇから。」


ブン太は、目を合わせてくれなかった。










第五話
崩壊

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ