SAKURA TRIP
□0話
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花音side▷▷
(……寒い)
身を切るような寒さを覚え、私の意識は覚醒した。
どうやら寝てたらしい。
花音『あれ、なんで川?』
上体をゆっくり起こし、何となく周りを見ると穏やかに流れる川がそこにあった。
(……もしかして私打ち上げられてた感じ?)
確かに自分はカナヅチである。
溺れて運良く何処かに漂流した、となっても何らおかしくはない。
しかしだ。
川に飛び込むようなことはした覚えがない。
(だとすればなんで?)
1人座ったまま考えて見るが答えが出ない。
とりあえず起きるまでの記憶を辿るしかないようだ。
確か今日、学校に遅刻しかけて家を飛び出し、全速力で自転車をかっ飛ばしたんだ。
それでいつもの下り坂を降りて…
それから…
それから…
それから?
それからどうしたんだっけ?
不思議なことにそこで記憶がプツリと途絶えてしまっていた。
(とりあえずお母さんに電話しなきゃ!)
側に落ちている鞄からiPhoneを取り出すとロック画面を解除した。
花音『圏外って……嘘でしょ』
画面の左上に小さく表示された二文字。どうやら電話はできないらしい。
(今どき圏外って…)
はぁ、とため息をつきiPhoneをしまう。
(この歳になって迷子とか屈辱。これはもう自分の脚で散策するしか…)
制服のスカートについた埃を取り払うと、鞄を持ち立ち上がった。
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