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□あなたから離れた日
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島のみんなのおかげで、わたくしソニアは、無事元の身体にもどれました。
身体を取り戻すために、アゼルちゃんには本当に迷惑ばっかりかけちゃって、感謝しきれないよ。

だけど、お互い成長して前みたいにいつでも一緒にいられなくなってホントは寂しかったんだ。だからほんのちょっとね、魂が同居してること、嬉しかったんだ。
ユミルに乗って冒険してるとき、小さい頃2人で遊んでたみたいに、ドキドキわくわくしてた。
もちろんお風呂のときとか、困ることもいっぱいあったけど...

「ねえ、ソニア」
「ん?なあにオデットちゃん?」
「あー...、ごめんやっぱり何でもない!」
「えー、そこまで言われたら気になるよー...」
「その、私の勝手な想像だけどさ、もしかして本当は今までどおりアゼルと暮らしたかったんじゃないかな、って」

宿屋に移る私のために、一緒に部屋を掃除しているオデットちゃんは、私に背中を向けたまま言った。
耳の淵が真っ赤になってた。

「そんなことないよ、だっていくら幼なじみとはいえ、この歳で同じ屋根の下に2人っていうのはちょっと...」
「そ、そうだよね!!アゼルも、お、男なんだしね、!うん...。って、おい!そういうことじゃなくて」
「え?」
「なんだかんだ言ってソニアがこの時代のフィーニス島に来て、初めて一人だけの時間を過ごすんだなって思って。大丈夫?」
「あ...」

考えてみればそのとおりだった。元いた場所を離れてから今までずっとアゼルちゃんと一緒だった。ふるさとを離れてからずっと2人で冒険してきたから、寂しいと思うこともなかった。
これからは本当に一人で頑張らなくちゃいけないんだ。

「あの、私もお姉ちゃんもアイリスも、みんなみんなソニアの家族だから!!いくら一人暮らしって言ってもすぐ近くには私たちもいるし、命さんもいるから安心だし、寂しくなったら酒場に降りてくればいいから!」
「うん、ありがとうオデットちゃん。本当に私を置いてくれてありがとう」
「ふふっ、困ったときはお互い様でしょ。それにアルバイトだってしてもらうんだからねー!」
「うん!がんばるよ私!」

これからアゼルちゃんはまた、ちょっと前までみたいに他人になっちゃうんだ。もう、私の一番近くにいる人じゃなくなっちゃうんだ...。

どうしよう、どうしよう。

わたし、寂しいよ、アゼルちゃん......。

「お前...」
「うっあっ、アゼルちゃん...?!」

ユミルを眺めていたらいつの間にか夜で、いつの間にかとなりにアゼルちゃんがいて...
気がついたら涙が止まらなくて、またアゼルちゃんに迷惑かけちゃった。もう、これからは一人で頑張らなきゃいけないのに。

もしアゼルちゃんが過去の時代に戻ると言ったら、私はどうしよう。
少し前なら、即答で私も戻ると言ったと思う。
だけど2人とも大きくなってずっと一緒ってわけにもいかないと思う。

わたしはどうしたいのかを、よく考える。
決断はそう遅くない未来。

こうして2人きりの夜もきっとこれが最後。

アゼルちゃん、これが最後の迷惑だからお願い。
朝が来るまであったかくて大好きな肩を貸してください。
 

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