紅舞ウ地
□決断
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「ねぇ、マルコ……」
「ん?」
「エースがね、海賊に捕まった時私に戦えって言ったの。」
「それで?」
「……結局何もできずに白ひげの名に助けられたんだけどね。」
ビキニのみの肌にさらけ出された背中の刺青……。
エースが戦えと叫んだ時、確かにあの時、自分の中の何かが揺らいだ。
「私、本当にこのままでいいのかな……?」
悩ましい感情にアリアは難しい顔で首を傾げた。
「事を荒立てて、世間に名が知れるかもしれねェことを……政府に追われるかもしれねェことをまだ懸念してるのかい?」
ポツリ、呟いたマルコをアリアは見つめた。
自分が"ここにいる意味"が全てなくなってしまうのではないか。積み上げてきた6年が……共に過ごしてきた思い出が、全て一瞬で消え去ってしまうのではないか……。
「この船に乗り込んでも、追われることへの恐怖心が自分の中から消えたことはないよ……。」
どんなに強い味方を得ても、どんな名をこの背に刻んでも……
マルコは見透かしたようにふっと溜息ひとつ落とした。
「だろうな。お前のその背中の傷はそんなに浅いもんじゃねェ。」
「…………。」
「だが……お前が何もしなくても、どこまで行っても……お前はこの白ひげ海賊団の一員だってことは忘れるな。」
「……それはどういう意味?」
マルコは自分の問いにそれ以上何も明言してはくれなかった。
答えは自分で見つけろ。そう言われているようで……。
「もう今日はゆっくり休め。少し様子を見に来ただけだよい。」
マルコはゆっくり腰を上げると、医務室を後にした。
アリアは心の中でマルコの言葉を復唱した。
白ひげ海賊団の一員……
そんなことはわかってる。マルコは何を伝えたかったのだろうか……
それに、どんな理由であれ政府が……
"アイツら"が自分を逃がすはずはない──……。
アリアは静かに医務室を抜け出した。