紅舞ウ地
□傷だらけの髑髏
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「お前陸の知識は全くなんだなァ。」
「ほとんど海の上での生活だったから……。そおいうエースは詳しいね。」
「ああ。ここはおれが生まれ育った場所に少し似てる。」
「エースの故郷?へぇ、その話すごく興味ある。」
「……いやっ、今はそんな話してる場合じゃねェ。先へ進もう。」
そう何故か歯切れが悪そうにエースはそのまま自分の腕を引いた。そんなエースが気になったが、すぐに意識は別の方へ削がれた。
えっ……?
「……………。」
アリアは先を行くエースの背中を見つめた。すると、視線を感じたのか、振り返ったエースと目が合った。
「ん?どうかしたか?」
「ねぇ、エース……手……」
何をどう伝えたらいいのだろう。なんだか自分の方が照れ臭くなってきて、アリアはエースの握る手を指差した。するとエースは、「ん?あァ、危なっかしいじゃねェか。」そうアッサリと言ってのけ、何事もないかのように歩きだした。
それだけ?と、もう少しで出そうになった言葉を押し殺して、アリアはひとりで笑いを堪えた。
矛盾していつもと違う胸の感覚を覚えた。フワッと宙に浮いた時のような。
何、この感じ……。
クルーたちと居る時こんなことは無い。こんな感覚は初めてだった。
掴まれた腕から伝わるエースの体温は自分よりもずいぶんと暖かい。
トクントクンと静かに脈打つ心臓。妙に帯びた熱。それが冷め止まるまでには時間がかかった。