波紋の刻
□隊士の階級
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──……
「え、十八?なーんだそんなに俺と変わんないじゃん。何年とか言うからさぁ、てっきりそんなに長いこと鬼殺隊にいるのかと──」
「八年かな。」
「へ?はち……俺の聞き違いだよねぇー。だってこんな女の子が八年も鬼殺隊で頑張ってるなんてぇー……」
「鬼殺隊に入隊して八年よ。一応。」
一瞬間を置いて。
「はいぃいい??!」
甲高い善逸の声が響いた。そしてまた癇癪のような話が始まるわけで。村里までの道中だけで善逸のこの軽快な調子には慣れてしまった。
「めっちゃ先輩じゃん!あれ、でも階級は同じ?!いや、長く鬼殺隊にいる割に昇進してないとかそんなことを言ってるんじゃなくて!」
「ふ……ふふっ……。」
「えっ……あっ、何か俺可笑しかった?」
急に笑い出す朔夜に善逸は戸惑った。
「いや、こんな雰囲気の鬼狩りは初めてだなぁって。あはは……!」
「いやぁ、俺その鬼狩りをすんごーく怖がってるんですけどぉ、決して笑うとこじゃないんですけどぉ……。」
怖がっているところ申し訳ないが笑い出したら止まらなくなった。調子が狂ったのは善逸も同じのようで善逸は涙を浮かべながら近くの電柱に擦り寄っていた。
「そういえば、私の階級って同じとこから一向に上がらないのよね……。まあこんな低い階級で八年も生き長らえている方がある意味凄いと思っているけど。」
「ちょっ……何サラッと怖いこと言っちゃってんの?!」
「あ、ごめん。つい、また。」
笑い飛ばしながらも自分も少し考えた。言われてみればという感じだが。最後に階級が上がったのはいつだっただろう……。
二年前……?いや、数年……?もっと前……?
義勇が水柱に抜擢されていたようなされてなかったような……
出世が眼中にない朔夜にすれば特段気に止めることでもなかったので考えたところで分からなかった。階級は個人の実力に比例するのだから自分には与えられた階級程の実力しかない、ただそういうことだろうと素直に受け止めていた。これが継子なんかになると話は別だろうが、自分はただの一般隊士だ。
何年経っても同じ階級をさ迷っている人間なんて珍しくない。それに上に上がることのできない実力の無い人間はほとんどと言っていいほど任務の途中で死んでしまう。やはり長い年月鬼殺隊に身を置いていればそれなりに強い鬼とも遭遇するわけで。嫌という程それを見てきた朔夜には余計に今生きていることでさえ運のお陰だと思えた。そんな雑論をしながら村の外れに差し掛かった時だった。
「朔夜ちゃん、ちょっと待って。」
善逸の声色が変わった。朔夜は言われるがまま足を止めた。自分は耳がいいわけでも鼻が効くわけでもないが、それでも長年の経験からわかった。
空気が重い……。
鬼が近くにいる──……。