紅舞ウ地

□二つのシルエット
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二日が経った。
エースが白ひげ海賊団への入団を告げたことは姉妹船にいる自分の耳にもすぐに届いた。

思い出してアリアは嬉しさを噛み締めた。ベッドの中で年頃の娘がひとり笑っているなんて気色悪いものは無い。その笑い声を聞いて気味悪さで部屋の前で足を止めても、そのドアを叩く者もいなかった。

ちょうど日が暮れかかった頃、誰かがが自分の部屋をノックした。

「はい、はーい。」

アリアは軽快に床を蹴り、ドアを開ける。その人物にアリアは少なからず驚いた。

「元気そうだなァ。」

「あれ、マルコが来るなんて珍しいね。」

「今日はまだあっちで見かけなかったからなァ。」

「昨夜見張り番でさっきまで寝ちゃってた。それよりどうしたの?」

「今夜の宴の誘いだよい。」

宴の誘いと聞いてピンと来た。

「エースの歓迎会?」

「そうだ。」

「オーケー。直ぐに私も本船に行くよ。」

「その寝癖ちゃんと直してから来いよい。」

そう言ってマルコは笑いながら、他の船にも伝えてくると部屋を出ていった。指摘された髪を適当に手ぐしで整えながら、アリアはまたバタりとベッドに倒れ込んだ。

「歓迎会かぁ……。」

天井を見つめ呟く。
特別何も準備していなかった。飲んで食べて騒ぐだけでも、この船の歓迎ムードは充分伝わるだろうが……何かないだろうか。
アリアは六年間付き合ってきた部屋をじっくり見渡した。徐に机の引き出しをあさってみたが、特段目ぼしいものも見つからなかった。

ベッドにタンス、机に椅子。

「…………。」

今更だがこうやって見てみれば、飾り気もない殺風景な部屋だ。自分でもげんなりする。唯一色があるのは、ハンガーにかけられた着替えの洋服くらいだろうか。
滅多に買い物にも街に降りない為、洋服なんかはナースたちに頼んでいる。さすがに女目線のセンスだけあって、着やすくて色鮮やかなビキニやスカートが多い。

「今度、自分で街にでも行ってみようかな……。」

アリアは諦めてモビーディック号へ向かうことにした。
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