紅舞ウ地

□決断
7ページ/7ページ


「なら全部叶えちまえばいい。天竜人が、政府が、そんなに偉ェのか?!そんなモン関係ねェ!」

「エース……。」

「何かあれば"俺たちが"全力でお前を守ってやるよ。」

──俺たち……。

身体の中をすっと何かが通り抜けた気がして、アリアははっとした。
今まで仲間たちに心配されることはあった。だけど自分の行動を制限されたことなどあっただろうか……。
迷惑をかけてはいけないと、どこか後ろめたい気持ちがあって、自然と自分を抑えていた。

いつも行ってこいとみんな背中を押してくれていたのに……

そんな気持ちを受け止めることが自分には出来ていただろうか……。なぜ今頃それに気づいたのだろう……。

いつだって、自分は仲間の存在に守られていたのに。

エースに言われて、気付かされた。

「……そうだね。うん、そうするよ。」

「ん、どうかしたか?」

アリアはクスクスと笑い出した。何もかもが自分の中から解放された。

「ピンチな時はみんなに助けてもらう。」

だって、自分は白ひげ海賊団の一員なのだから……。信頼出来る仲間たちがいるのだから。


自分は独りではない。

ねぇ、そう言いたかったんでしょ?マルコ……


「エース、ありがとう。」

アリアは背伸びした後、立ち上がった。鉄のように重かった足も、不思議なほど今は軽かった。

すーっと大きく息を吸って、エースに手を差し出した。

空に浮かぶ三日月が、いつの間にか淡く強い光を放つ満月になっていた。


「改めて。白ひげ海賊団へようこそ。よろしくね、エース。」

エースは目をパチクリとひとつ瞬かせ、にかりと眩しい笑みを見せて自分の手を取った。

「おうっ。」


──新しい冒険が始まる予感がした。


「コラー!二人共、ベッドに戻りなさい!」

甲板のドアが勢いよく開く音と共に、甲高い女性の声が聞こえてきた。

「げっ。あのナースしつけェんだ。」

「ちょっ、エース?!」

エースはアリアはの手を引いた。
太陽のような笑みを並べ、二つの影は夜のモビーディックを駆け抜けた。

フワりと靡くエースの髪の毛。
エースといると不思議と笑顔が零れてしまう。いつまでも、この暖かい気持ちが冷め止まることはなかった。

その後、揃ってナースたちからのお咎めをくらったのは言うまでもない。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ