紅舞ウ地

□決断
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チューブの中で、一定の感覚で落ちる水滴。それは静かな空間に唯一ある変哲。簡単な検査と傷の手当を施した後、水分補給用の点滴を繋ぎドクターたちは部屋から出て行った。
ゆっくり休めるようにという計らいなのだろうが、船へ戻り数時間経っても、妙な胸のザワつきから眠ることも落ち着くこともできずにいた。

アリアはベッドに上半身だけを起こし、ぼんやりと遮られたカーテンを見た。

「…………。」

仕切りのカーテンの向こうにはエースもいる。エースは至って元気なようで「寝りゃ治る」そう言ってドクターを追い出していたが、それ以降音沙汰がしなくなった。
幾度となくタイミングはあったのに、かける言葉も思い浮かばず時間だけが流れた。

無様な自分の姿を見られて、どう思われただろうか。聞くのも怖かった。

ガチャっとドアの開閉音がして、その足音は一直線に自分の元へと近づいてきた。
そっと開けられたカーテンの隙間から覗いた人物に、アリアは少し身構えた。予想はして構えていたつもりだったが、それは自分へ向けられた視線に抱いた罪悪感からだ。

「マルコ……。」

マルコはベッドの傍らにあった椅子に静かに腰掛けた。

怒ってる……?

無言の威圧に耐えきれず、アリアは頭を下げた。

「ごめんなさい。」

そう謝罪を述べて。

「なんの謝罪だ?」

「心配かけただろうし、迷惑もかけたから……。」

アリアは布団を握り締めた。ふっと、マルコから聞こえた小さな笑い。アリアは伏せていた顔をあげた。

「お前は、仲間を助けようとしただけだろう。それの何を責める必要があるんだよい。」

怒るどころか、自分の様子をおかしく笑うマルコがいた。アリアはぐっと感情を堪えた。

「ははっ、何て顔してんだよい。」

優しく笑うマルコ。……マルコはいつもずるい。
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