紅舞ウ地
□初めての外界
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翌日、買い出しも兼ねて港へ降りることになった。街へと出かけるのはいつぶりだろうか。早る気持ちを抑え切れず、アリアは誰よりも先にタラップを駆け下りた。
しかしながら白ひげ海賊団の雑務も忘れているわけではない。とりあえずひとつ、荷車は引いているところは抜かりない。
まだ船にいる仲間たちに向かってアリアは急かすように手を振った。
「そんな楽しみか?」
にかりと笑いながら荷車を頭の上に抱え、エースがタラップを降りてきた。アリアは荷車に肘をつきながら陽気に微笑んだ。
「少し緊張してる。」
「この街にはうまいメシ屋あんのかな。」
「あはは、エースってば食べ物のことばっかり。」
「初めての街へ行くんだ。まずは名物の食いもんだろ。」
そんな微妙に噛み合わない会話をしつつ、食べ物の事でも思い浮かべているのだろうか、ペロりと舌を出すエース。
なかなか…分かられるものでもないかもしれないが、気づかいされない方が逆に構えなくていいのでちょうど良かった。
「アリア、エース!おめェら肝心の調達忘れんじゃねェぞ!」
雑談していると、続いて降りてきたクルーたちに笑いながら一喝された。そんなクルーをエースもまた笑い飛ばす。
「ははは、頭の硬ェ奴らだな。楽しくいこうぜ。」
「なんだとコンニャロウ!誰が頭が悪ィって?!」
「うげっ!言ってねェ!」
首に絡まりつくクルーたちに踠くエース。鬱陶しそうだけれど、でもどこか楽しげに、エースの周りはいつも笑顔で満ちていた。
まだ一週間。なのに、この船でその名が呼ばれることにもすっかり聞き慣れた。仲間たちはエースを受け入れ、エースもまた驚く程早くこの船に馴染んだ。エースには他人を惹き付ける何かがあるみたいだ。
本当に白ひげ海賊団の一員になったのだと、仲間たちとの戯れを見ていると、そう実感する。