紅舞ウ地
□傷だらけの髑髏
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ここは新世界のとある無人島。無人島と思っていたそこに見えた人の影に、自分たちはその脅威を確認すべく森の中を探索しているところだ。
生い茂る草木。泥や石の足場という不慣れな環境にアリアは苦闘していた。
「そういやァお前、戦闘にでてるとこ見たことねェけど、戦えんのか?」
先を歩いていたエースが不意に立ち止まり聞いてきた。
「戦ったことは……ないかな。非戦闘員だし。」
「白ひげのポリシーとかいうやつか?」
「うん、だからこれは護身用みたいなもの。」
覚えてたんだと、アリアは腰のハーデスをぽんぽんと叩いてみせた。
「……戦えねェんなら、見つかんねェように隠れとけよ。」
「ふふっ、大丈夫だよ。自分のことくらい自分で守るから。迷惑はかけないよ。」
「ははっ、そおいう問題か……?まァなんでもいいけどよ。」
くるりと向きを変えて歩き出すエースの背中をアリアは見つめた。
「………………。」
砂浜での出来事をから少し、エースの雰囲気を柔らかく感じるようになった。今まで感じていた壁が少し薄れた気がするのは自分だけだろうか。
エースが言いかけた言葉。それが何なのかもどかしい気持ちでいっぱいだけど、エースは話すと約束してくれた。
だから今は、目の前の事だけを考えよう。
しばらくして森の中枢へと差し掛かった。昼間でも薄暗い森の茂みの中に僅かに光が差した。
不安定に揺らめくそれは太陽の光ではない。それは間違いなく炎の火だ。
やはりここには人がいるのだろうか。
「エース、あっちに灯が見えるよ。」
アリアが灯の方へと足を踏み出した時だった。
「おい、ちょっと待て!」
そう言ってエースに腕を掴まれた。自分の力ではピクリともしないその強い力にアリアは驚いて振り返った。
「エース……どうかした?」
「先、見てみろよ……底無し沼だ。」
「えっ……」
自分が踏み出そうとしていた場所。でもそこは枯葉が何重にも重なって、到底そこに沼があるようには見えない。なんら今通ってきた道と変わらない場所だ。自分の疑問に答えるように、エースは大きめの石をそこへ投げ込んだ。
ボトンッ──。
するとどうだろう、エースの言うとおり枯葉の中へ石は沈んで姿を消した。
サアっと顔の青ざめるアリアにエースは苦笑った。