マイフレンド A

□愛しき人こそ遠い人
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新一sibe
はぁ・・・。
俺はため息をついた。
俺は工藤新一。帝丹高校3年生。
今ため息をついたのは、愛しい人が遠すぎると思ったから。
俺の愛しい人・怪盗キッドこと黒羽快斗は、俺が住んでいる米花町から少し離れた江古田に住んでいる。
怪盗キッドを引退したというのは風の噂で聞いた。が、それからと言うもの、黒羽快斗とは会っていない。その間にも俺は黒の組織との戦いも終え、無事に元の姿に戻った。黒羽にあったのは、コナンの姿でのみ、新一の姿にもどってからは会ったことの無いのだから仕方ないのだけれど・・・。
だけど、だけど。好きなやつに会いたいって言う気持ちは抑えきれないのだ。
欄が好きだった頃よりもっと、快斗に会いたいって思う。
男の癖に女々しい事を考えるな。
頭をぶんぶん振りながら、自分に言い聞かす。
「工藤くん、何しているのか知らないけど、其処退けてくれる?邪魔なんだけど」
「あぁ、ごめん宮野」
宮野志保。こいつも元の姿に戻ったのだ。宮野は黒の組織から抜け出す際にAPTX4869を飲んで、俺と同じように小さい姿になっていたのだが、俺と一緒に姿を戻したのだった。
俺は言われた通りに道を開け、ソファーに腰掛ける。
「なぁ、宮野。俺、恋しちゃってるかも」
「誰に?」
「元怪盗」
自然に口に出してしまう自分に驚く。
怪盗への気持ちに気づいたのは、怪盗に会わなくなってからの事だった。二か月前、やっと蘭じゃなく、元怪盗こと黒羽快斗好きだと知ったのだ。
・・・俺は宮野を見る。やっと気づいたのか?と言うような哀れな目を向けられていた。
「やっと気づいたのね」
ほら、やっぱりな。
「2ヶ月前に気付いたんだよ。悪いかよ」
「いいえ?寧ろ自分で気づいてくれた事に感謝するわ。それで?私に何か話でも?」
俺の目の前にあるソファーに腰掛けながら聞いてくる宮野。
話、・・・話?いや、宮野に話はない。あるとしたら黒羽にだ。
何で会いに来ねえんだよ、とか。思いついたら切りがない。
「工藤くん、あなたは気づいてないんでしょうけどね、その怪盗さん・・・」
「新一?・・・あっ、こんにちは宮野さん。新一、今度の月曜日の6月21日に青子ちゃんに誘われて、青子ちゃんの幼馴染の黒羽快斗君っていう人の誕生パーティーに行くんだけど、一緒に行く?」
・・・行きたい。
さっきまで考えたいた愛しい人に会えるのなら。
でも、この幼馴染はオレの事を好きなのだ。そう簡単に喜んで行く!とは言えない。小さい頃から一緒に居るからわかるのだ。
目前にいる幼馴染を見て思う。
すると、成り行きを見ていた宮野が口を挟む。
「いいんじゃない?行ってくれば。工藤くんも暇つぶしになるんじゃないかしら」
「そうよ、新一。最近前より探偵の仕事してるんだから、気分変えようよ。快斗君優しいし面白いし、新一に少し似ているから、仲良くなれるかも」
「行く。蘭と一緒に行く」
「ほんとぉ〜?良かったぁ」
喜んでいる蘭を見て笑うと、宮野に目を向ける。困ったように笑う俺に、目で言葉を返す宮野。
『良かったじゃない。怪盗さんに会えるようになって』
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