マイフレンドD

□〜君と僕が幸せになれる方法〜 第2章 情緒不安定な理由
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一ヶ月が過ぎ、零の体調は万全とはとても言えないが、組織の仕事ができるくらいには戻ってきていた。
組織の元で研究をさせられている志保と、その姉の明美を助けるため、零達は順調に作戦を立てていた。
宮野明美と、志保の姉妹を助けたら組織を抜ける。そんな目標を立てながら。

今日は、宮野姉妹が家に来る日。ジンには姉妹を会わせたいという目的で、家に呼ぶことを許可してもらっていた。
秀一に迎えを頼み、その間に皆で食べようと作っていたおでんを完成させた。結婚祝いでメアリーから貰った圧力鍋は使い勝手がよく、煮物が早くできるからいつも愛用している。
味見をして蓋を閉めると同時に玄関のドアが開く音が聞こえ、エプロンを取り、玄関の方へと向かう。
「おかえりなさい、大お兄ちゃん。そしていらっしゃい、宮野明美さんにシェリー」
「ただいま、澪南」
「「おじゃまします」」
帰ってきた秀一と、初めてうちに来た宮野姉妹を部屋に案内する。案内が終わると、急いでお茶を入れお梵に置くと、3人が待っている部屋へと向かった。
「でっ、どうして私達を此処に呼んだんですか。彼を殺した貴方達が」
明美は零と秀一ににらみながら言う。それはそうだ、明美は恋人を殺されたのだから。それでも、彼を殺した≠ニいう言葉に、零はすごく傷ついた。
遥か昔、スコッチを殺したのは秀一だとと思っていた零は、秀一のことを恨んでいた。その時の秀一はきっと今の零よりもずっと傷付いていたのだろう。
零はそう考えながら、口を開く。
「そのスコッチの事で話があって来て貰ったんです。何も貴方達を殺そうとかそういう目的じゃありませんよ。
先に自己紹介して置きますが、私は赤井零。スコッチと同じく、この組織には潜入捜査官として潜入しています。そしてこっちは」
「赤井秀一だ。俺も同じく潜入捜査官だ。組織では双子の兄妹だと嘘をついているが、実は夫婦だ」
零は変装を取り、自分がノックである事を話すと、ついでというように、秀一も自分の本名を名乗った。
「それと、俺は君達姉妹とは従兄妹という関係になるな」
「はっ‍?」
名乗った後に爆弾発言をした秀一に宮野姉妹が驚く。と言っても、声をあげたのは明美だけで、志保は驚いたような表情をしているだけだった。
零は明美や志保が生まれた時から知っていたので、気にせず話を続ける。
「まぁ、その事は後にしましょう。
話を戻しますが、スコッチは私や秀一にとって大切な仲間でした。警察学校時代からの。子供が産まれてからも、なんやかんやで仲良くしてくれて・・・。
それからすぐ組織の潜入捜査になって、スコッチのノックの疑いがかかりました。私たちはスコッチを助けるために変装までして、難を遂げたと思ってたんです。彼は、私の友人が送って行った車の中で、亡くなりました。スコッチを助けたかったがために、動いていたのに、結局私は助けられなかったんです。毎回毎回、私は居ると大切な人が死んでいく。なら私は死んだ方がいいんじゃないかって思いました。私は死神だから、いなくなった方がいいって」
最後の方にはやはり自分を責め込み始めた零を秀一は抱きしめ、優しく零に言う。
「零は死神なんかじゃないさ。だから、いなくなったりしないでくれ、お願いだ」
「っ、でもっ。私が居たら、周りの人を傷つけちゃう。秀一さんだって零のせいで死にかけた。零なんて居なくなればいい」
「零、大丈夫だ。俺はちゃんとここに居るよ。絶対零を残して死なない。零が居なくなったら、俺はどうすればいい‍?多分、零がいない人生なんて耐えられず、零を追って俺も死ぬよ。零が居なくちゃ何も出来ないんだよ。零を必要としてるのは俺だけじゃない。一や優、有希子や優作、それからお袋や真純や秀吉だって、警察学校時代からの友人である萩原や松田や伊達だって・・・。それから健二だって、皆零を必要としてるんだよ。
死神だなんてとんでもない、零は俺にとっては天使だし、可愛い俺の奥さんだよ」
秀一は零が必要だと、死神だなんてとんでもないと涙を流しながら言った。すると、ごめんなさいと謝って零が笑いながら涙を流す。そのまま泣き疲れた眠りに付き、零を膝の上に寝転ばせて毛布をかける。このまま零の部屋に連れて行って1人にすると何をするか分からなかったからだ。秀一の服を掴み、眠っている零の髪を撫で、目の前にいる2人に話し出す。
「零は、自分の事になると、凄く鈍感でな。でもちゃんと、自分が必要なんだって感じると、こんな風に謝って、眠りにつくんだ。
零は小さい頃、両親を失った。だから人を失うことに敏感で、俺が死にかけた時は、今以上に大変だったんだ。もうどこにも行くな、零と一緒にいてってな。それからも色々あって、零は人の死に敏感何だが、自分がいる事で周りの人を傷付けるって気づいたんだ。だから精神不安定な時は、こうやって自分のことを責めてしまう。今みたいにな。本当なら零は話に関わらない筈だったんだが、君の言った彼を殺したの一言で零が話さないといけないって思ったんだろう。
いや、君を責めるつもりは無い。責めるなら俺自身だ。感情的になっていた零を止められなかったんだからな」
秀一は、小さく丸まり、秀一の服を握っている健気な零の頭を撫でる。
その様子を見ていた志保が口を開く。
「お姉ちゃん、秀さんや零さんは凄くいい人だよ。でもいい人すぎて、こんなふうに自分を責めることだってあるのよ。秀さんだって本当は零さんがこんな事になってしまったのは自分のせいだって責めてる。
お姉ちゃんは、それが分かる‍?」
「・・・分かってるつもりよ。でも」
「健二さんを殺したのは零さんたちだって言いたい‍?こんなふたりを見て‍?ふざけないでちょうだい。お姉ちゃんがここまで人でなしだとは思わなかったわ。私は、そんな分からずやなお姉ちゃんは嫌いよ。いつもまっすぐて、人を信じていて、優しいお姉ちゃんが好き」
志保は、明美の目を覚ますために、ちゃんと思っている事を言ってしまう。明美はあっけに取られたような顔をしていたが、その後に眉を下げ秀一に謝る。
「ごめんなさい、私の心無い一言で零さんを傷つけてしまって」
「いや、悪いのは俺だ。零が今情緒不安定状態なのを知っておきながら、話し合いをさせてしまったんだからな。零はここに居させるじゃなかったって後悔してる。ごめんな、零」
膝の上に寝かせた零を抱き上げ、抱きしめる。そして謝ると、零が謝らないで下さい、と微笑んだ。
「秀一さん、私が今情緒不安定な理由何ですけど・・・」
零は秀一の耳元で言う。


妊娠したんです。

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