マイフレンドD

□〜君と僕が幸せになれる方法〜 第18話
1ページ/1ページ

「お馬さんだね!」
「にゃんでしろうろなの‍?」
まだ舌っ足らずの一が、何故白黒なのかと聞いてくる。一の中では馬だと認識しているからか、馬は茶色なのになんで白黒なのかと不思議がっているのだろう。
困ったように零が秀一を見ると、秀一が口を開いた。
「一、あれはお馬さんだけど、種類が違うんだよ。あの白黒のお馬さんはシマウマって言う動物だ。わかるかな‍?」
秀一のシマウマという言葉を聞いて、優がシマウマと連呼する。一は、秀一に尋ねられた事に頷いて笑顔を向ける。
一の笑顔を見て、零が秀一にお礼を言う。
「いや、気にしなくていい。一、ちょっとパパにおいで」
気にしないよう零に言うと、秀一は零が抱っこしている一を受け取り、優と一、2人を肩の上に乗っけた。
「秀一さん、大丈夫ですか‍?危ないですって」
「気にすることはないよ。零。ちゃんと支えてあるし」
「そういう問題じゃ・・・」
「零もしてやろうか?」
2人を肩に載せたまま秀一が零も乗っけるとふざけたことを言うから、零はいいです、と断った。
「パパ、たきゃいよー!」
「楽しいか‍?」
高い景色を見て歓声をあげる優と一。秀一は、抱き抱えた2人を落とさないよう抱える。
「ねえ、秀一さん。周りから見られてますよ‍?」
「あぁ、そうみたいだな。何でだろうか・・・」
零達はそんな会話を交わしながら、耳をすませる。周りの人達の会話はこんなものだった。
「パパー、あれ僕もしてほしい!」
とこっちを見ながらいう子や、
「俺でもできるのか?」
という男の声。それを隣で大きなお腹を撫でながら笑う女の人の声。
噂になっているのは多分、いや、絶対に秀一の事だろう。広い肩に子供を2人も抱えて居るのだから。
零は今更ながら、自分の夫を誇りに思った。本人には絶対に言うことは無いが・・・。

お昼頃、子供たちと共にポアロに行き、サンドウィッチを注文した。
ベビーチェアに座った優が、
「やったー、しゃんどいっち!しゃんどいっち!」
とやはり言葉ったらずではしゃぐ。
子供たちが食べやすいようにと切って、フォークを出してくれた店員に感謝して、子供たちにサンドウィッチを食べさせる。
それが終わったあと、零と秀一もサンドウィッチを食べる。
「んっ、やっぱり美味しいですね。ここのサンドウィッチ」
「あぁ、でも君が作るのには負けるな」
「もう!馬鹿ですか?秀一さん」
目の前で繰り広げられる夫婦漫才に、優と一が嬉しそうに笑いながら手を叩く。両親が仲が良いという事を感じているのだろう。
そんな子供たちを見て零達もつられて笑う。
「あっ、秀一さん。1つ、この子達を連れて行きたい場所があります」
「何処だ‍?」
思い出したようにな零の言葉に秀一が聞き返す。その場所は・・・。

スコッチが以前死んだ場所だった。
「ママ、ここどこ‍?」
散らかっていて、殺風景な工場の1室を見た優が怖がりながら言葉を紡ぐ。そんな優に大丈夫だと教えながら、零が教える。
「パパとママの思い出の場所だよ。いい思い出はあんまり無いけどね」
「おもーで‍?」
「うん、そうだよ。ここでは沢山思い出があるんだよ」
昔を思い出すように辺りを見回し、零は目を細めた。
秀一が隣に来て零の腰を抱いた。そうだ、今日ちゃんと子供たちに少しの間会えないことを伝えないと行けなかったのだ。
零は秀一に苦笑いで微笑まれながら、一と優を床に立たせて目線を合わせる。
「優、一」
「あい」
呼ばれて返事をするわが子が可愛くて、約1年も会えないという事を寂しく思うが故に涙を浮かばせながら優達に告げる。
「ママとパパね。明日から優と一と一緒にいられないの。ごめんね」
最後の方には涙を流していたかもしれない。優たちに告げ終わると、目の前が涙で歪んでいた。
子供たちの顔に不安の色が浮かぶ。
「なんで‍?いあだ!」
「ママといっちょにいちゃいよ」
優も一も涙目になりながらも一緒にいたいと告げる。零はそのこども達の一言で涙が溢れた。泣きながらふたりを抱きしめると、優達も声をあげながら泣き始めた。
「ごめんねっ・・・ごめんね、・・・一緒にいられなくて・・・本当にごめん」
「やらー・・・ママと一緒にいたいもん!ママー」
「僕もやらー!」
本格的に泣き始めてしまった零達を包み込むようにして秀一が抱きしめた。
「ごめんな、二人とも。でも必ず半月に1回ビデオを送る。手紙だって毎日毎日書くよ。だから、パパたちが帰って来るまで、待っててくれないか?」
秀一の2人を慰めるために掛けたこの言葉は、零から離れず泣き続ける2人の
「やらー!パパなんか、らいっきらい!」
という言葉にとって、打ちひしがれた。

パパなんからいっきらい!という言葉に傷ついた秀一は、家に帰ってきてから1人で自己嫌悪にふけっていた。
体育座りで狭い所に入り込み、手で耳を塞いだ。
そんな秀一を見て、しょうがないか、と零は考えたのだ。
それはそうだ、最愛の子供たちにパパなんからいっきらい!と言われたのだ。零だって同じ事を言われたら三日以上は寝込んでしまう。
零は秀一に近寄り声を掛けるが、
「皆、俺を嫌うんだ」
と独り言のように言われる。
これは重症だ。秀一がこんなにヘコんだ所なんて初めてだ。
これは子供たちに謝って貰うしか無いかな。
零は考え終わると、こちらの様子をじっと見ていた子供たちに近寄る。
「ねえ、優‍?一‍?パパ嫌い‍?」
目線を合わせて問うと、涙目になりながらも顔を振る。当たり前だ。ママもパパも同じくらいに好きなのだ。
「じゃあパパに謝れるね?パパは優たちに嫌いって言われて傷ついてるから、よしよししてあげないとダメだよ」
「あい!」
小さな足で歩き、秀一のところまで行き、パパと呼ぶ。いつになく青い顔をした秀一が何だ、と問う。
「パパ、ごめんなしゃい!」
「ごめんなしゃい」
優と一は見たことの無いくらい怖い顔をした秀一に震えて泣きそうになりながらも、謝って秀一に抱き着いた。
「パパもすまなかった。お前らはママと話していたのに急に話に入り込んでしまって」
「ちばうもん!謝ったのはパパ嫌いって言っちゃこちょだもん!」
「えっ‍?」
秀一は謝ってくれたのはてっきり、怒ってしまってすまない、という意味だと思っていたのに、予想は外れ、秀一に対して嫌いだと言ったことに対して謝っていたらしかった。それに気づいた秀一は涙を流しながら子供たちを抱きしめた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ