マイフレンドD

□〜君と僕が幸せになれる方法〜 第15話
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出産予定日があと一ヶ月後に迫った。
秀一は仕事始めのせいかまだ定時で上がることが多く、1週間に1日は休みを取らされて、こうやって病室に果物や本などを持ってきてくれる。
「秀一さん、ありがとうございます。今回のこれには本当に助かります」
今日秀一が持ってきてくれたのは、抱き枕だった。寝返りを打つのでさえ大変だった零にとって、これはありがたい。
秀一は微笑みながら、零の髪を撫でてくるので、零は心地よさに目を瞑る。
「零、子供たちの名前なんだがな」
「考えてくれたんですか?」
「あぁ。俺たちの子供なら、どんな名前が良いだろうと考えた結果がこれだ」
白い紙を四重に折った2つの紙を渡して来る。零は一つずつ丁寧に開いた。そこには・・・。
一つ目の紙には、命名・澪と書かれてあった。小さく女の子と書いてあるから、これは女の子だった場合だ。もう一つの紙には、命名・優と書かれてある。
「どちらがいいかは零が決めてくれ。双子だからもうひとりの方は零に決めてもらいたい」
「どちらもいい名前です。じゃぁこんなのはどうです‍?」
零は唇に狐を描きながら、秀一に案を告げる。零の提案を聞いた秀一も微笑む。
「それはいい考えだ。そいえば零は名前考えてくれ無いのか‍?」
秀一が微笑みながら聞くと、零のベットの近くにある机の上にあるノートを指さす。
「それ、取ってもらってもいいですか?」
「あぁ、これか」
ノートを取った秀一が零に手渡してくる。
「私も何度も考えたんですけど、やっぱりこれが1番しっくり来て・・・」
そこに書かれていたのは、一という一文字だった。秀一の一から取ったのか、零の次だからという理屈なのかはよくわからないが、秀一は零が書いた一という字を見つめる。
「別に、あなたの名前から取ったんでも、私の名前の次だからという事でもないですよ。ただ、私達は最初から気が合わなくて、スコッチの件があって恨みあってた。秀一さんを憎んでたあの頃は、こんな未来があるなんて知らなかった。でも秀一さんと和解しあった時やっと一からのスタートでしたよね。東都水族館の事件の後、秀一さんから告白してもらって、嬉しかった。これから秀一さんと2人で一緒に未来へと進めるんだって。でもそれも長くは続きませんでした。
以前あなたには喧嘩腰で居たのに、あなたが僕を愛してくれてたから今があると思うんです。ありがとう、赤井・・・。これは以前の私からです。そして生まれ変わった今、私はいつもあなたのそばであなたを愛していられる。それが何より幸せです。ありがとうございます、秀一さん」
「それのどこから一という名前が生まれたのかな?」
今気強く零の話を聞いていた秀一が、名前の由来を聞いてくる。
「一、という言葉が一番好きなんです。以前の時、そして今世も秀一さんとの記憶は何故か一からという事が多いんです。だから子供たちにも、一から何でもしてほしいと思ってるんです。だからこの名前にしたんです」
「そうか。俺のことまで考えてくれていたんだな。ありがとう、零。君は最高の奥さんだな」
「ありがとうございます。でもそれを言うのなら秀一さんは最高の旦那様ですよ。子供の名前を必死に考えてくれて、仕事で来られない日は毎日自分が疲れていても電話をくれる・・・。それにこんなに頭が良くて、格好のいい旦那さんなんてこの世に貴方だけですよ秀一さん。私はこんな旦那様を貰って、すっごく幸せです」
零は幸せそうに微笑んで、大きなお腹を撫でる。秀一も零につられて微笑んでお腹に負担が内容に抱きしめた。

そして出産予定日。
双子故に早く生まれるのがざらなはずだが、零の場合は違った。出産予定日まで(何回か陣痛は来たが)、赤ちゃんが産まれなかったのは赤井さん夫婦が初めてだと看護師や担当医にも褒められた。
秀一も出産予定日に合わせて有給を貰っていたらしく、出産に立ち合っている。
「しゅういち・・・さん!痛い・・・よー」
「大丈夫だ零。俺はここにいる。俺たちの子供が今生まれ出ようとしてるんだ。痛いのは変わってやれないが、零。赤ちゃん達のために頑張ってくれ」
泣き叫ぶ零の髪を撫でながら秀一が言い聞かせるようにいうと、涙目になりながらも頷いたので秀一は褒めてやりあともうちょっとだと零に言う。
「赤井さん、もう頭出ましたからね。あとは身体が出るだけですから、いきんでくださいね」
生きんでいいと言われ、零は看護師のタイミングに合わせ握っている秀一の手を握りしめながらいきんだ。
第1子には、可愛い女の子が産まれた。
名前は赤井優。体重2500g。
そして第二子には元気な男の子が生まれた。
名前は赤井一。体重2800g。
女の子の方の名前を決めたのは、どちらに似ているかだった。もしも零に似ているのなら澪、秀一に似ているのなら優にしようというのが零の提案だ。
でも本当の所、名前をつけるのには戸惑った。それは優は零と秀一の両方に似ていたからだ。
髪の色は零と同じ亜麻色の髪。目元は秀一に似て切れ長で長い睫毛が特徴的。これでは判定がつかず、じゃぁ目の色で決めようと言って優の目が開くのを待っていた。
でも見る人口々にこう言う。赤井さん夫婦の目の色を混ぜ合わせたような色だと。
なので結果、零の独断で優と言う名前に決まった。
一の方は出産時、凄く大変だった。2800gもあるので、なかなか産道を通れなくて、少しハサミで切った。
やっと産まれた赤ちゃんをみて、思ったのは優の時と同じく両方に似ていることだった。
「一の目元は零に似ているな」
「優の目元は秀一さんに似てますよ」
「そうか。優の髪の毛の色は零の色と同じだ。綺麗な色をしている」
「ありがとうございます。一の髪質はあなたに似て黒くて1本いっぽんが細いですね。凄く綺麗です」
「本当に可愛いな」
「ええ」
退院日に子供の顔を見ながら、親バカのように子供の髪の色や目の色を褒める。
でも1番に思うのは子供たちが無事に生まれてよかったという事だ。零と秀一は口には出さないが、頬を緩めて笑いながら子供たちに心の中で伝えた。

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