マイフレンドD

□mother 〜暖かい愛の作り方〜 弐
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妊娠した事を知り、生む決意をした後、仕事場に退職願を出してからお腹にいる子供の父親の元に向かった。
家のインターフォンを押すことはせず、鍵を開けて家に入る。そういえば確か赤井は今日、帰るのが遅いと言ってたな。
零は今朝の会話を思い出し溜め息をつくと、リビングに置いてある横に長いソファーに寝転ぶ。
別れると決めたのは良いけど、駄目だな。赤井から離れるなんて考えられない・・・。ごめんね‍?ダメな母親で。でも今だけは、赤井を思って泣きたいの。
「ん、・・・ふっ・・・赤井・・・っ」
嗚咽を漏らしながら、泣いた。困らせたくないから赤井の気持ちなんて一切考えずに、自分が傷つかない方向へと回す自分は確に馬鹿だと思うが、もう決めた事だ。今更変えることなどしない。
一頻り泣いたあと、まぶたが腫れないように氷で冷やす。お腹を冷やしては駄目だと聞いていたので、お腹の上には毛布をかけた。肌寒い季節になってきたから、毛布を掛けたら丁度いいくらいだろう。

それから5年が経ち、子供は4歳になっていた。目元や目の色以外は全て赤井の血を受け継いでいた。
白い肌に黒い髪、赤井のくせっ毛までもだ。
零は眠っている我が子を見て思いながらも、起こさないと保育園の時間に間に合わなくなってしまう。零は未だに被っている布団を剥ぎ取り、声を掛ける。
「透香、早く起きなさい。早く起きて準備しないと、保育園間に合わなくなるでしょう?」
布団を剥ぎ取られ、眩しい光と寒さに腕をさすり目を擦る透香に言うと、
「Only at 5 minutes more.(あと5分だけ・・・)」
「Any more, I'll never meet! I meet,‍ five minutes would say again in five minutes even if I say? Get up and prepare early. I have to go to work after even a mama sends Toka.(もう、いつもそうじゃない!そうやって言っても五分たったら又五分っていうでしょう‍?早く起きて準備しなさい。ママだって透香を送ってから仕事に行かないといけないのよ)」
透香は誰に似たのか、英語を喋れる。教えてもないはずなのに、こんな風に日常茶飯事に英語が飛び交ったりする。多分、赤井の血も流れているから、そう言う賢いところは彼奴に似たんだと思う。零自身英語は得意ではない。まぁでもそれは勉強して何とかなったが・・・。
やっとベットから起き上がった透香がoff course、と返してくる。
「早くご飯食べよう‍?ママ」
「うん。ごめんね?怒鳴ったりして」
「ううん、私の方こそごめんなさい。先に顔洗ってくるね」
本当にいい子だな、と思う。友達だって多いし、人懐っこくて、四歳児なのにこの前来た風見をその見た目で虜にしてしまった。我が子ながら、可愛いと思う。親のいい所を凄く受け継いでいる、と風見も言っていたが本当にそうだ。
ご飯を注ぎ終わり、味噌汁を注ぎながら考えていると、顔を洗い終わった透香が戻ってきた。
「もうちょっとで味噌汁を入れ終わるから、椅子に座って待っててね?」
「うん」
零の言いつけを守って透香がダイニングにあるテーブルの横に置いてある椅子に座る。零はそれを見届けると、味噌汁を注ぎ終わらせ味噌汁が入った器と、ご飯が入った器をトレイに乗せて、透香がいるダイニングに向かった。

保育園に透香を送ったあと、零は今働いている喫茶店に向かった。十分も掛からず喫茶店に着き、裏口から店へと入った。
「あら、おはよう!澪ちゃん」
この店に入って最初に仲良くなった西川小百合が零に話し掛けてくる。最初にあった時は学生に間違えられたのだが、本当の歳を言うと同い年ということが分かり、それから仲良くなったのだ。
「おはようございます!小百合さん。お子さんの熱大丈夫ですか?」
「えぇ、やっと平熱に戻ったの。零ちゃんのお粥が効いたのかしらね」
ふふふ、と笑う小百合に零も微笑んだ。
エプロンを付け、背中にまで伸びた髪をゴムでくくる。
「零ちゃん、まだ少し時間あるし私が括ってあげるわ。娘ので慣れてるから・・・。三つ編みでいいかしら?」
「ありがとうございます、小百合さん」
くくったゴムを解いて小百合が三つ編みをして行ってくれる。
数分で出来上がり、 鏡で小百合がしてくれた髪型を見る。
「わぁ、すごい。ありがとうございます、小百合さん」
「いいえぇ、今度やり方教えてあげるわ」
「ありがとうございます。これで透香にもしてあげられますね」
「うん。あの子凄く似合うわよ!綺麗な黒い髪だし、肌も白いから羨ましいわ」
零ちゃんの髪の色も良いわよね。
と付け足してくれる小百合は、本当にいい人だと思う。自分が昔気にしていた、日本人離れしたクリーム色の髪は昔はコンプレックスだった。なんで自分はこんな髪の色なんだろう、と何回も親を怨んだことか・・・。でも、自分の髪を褒めてくれた人がいる。最初に褒めてくれたのはスコッチだった。あの頃はスコッチに褒められるだけで嬉しくて、スコッチ以外の人と付き合うなんて考えられなかった。
その次は、赤井だった。お前なんかに褒められても嬉しくない。と嫌っていた頃はよく言っていたが、赤井を好きになってからは褒められて凄く嬉しかった。
その後も、何回も褒められた。敢えて名前は出さないが、スコッチに最初に褒められたのがきっかけで自分の髪を好きになったのだった。

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