マイフレンドD
□mother 〜暖かい愛の作り方〜
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「ご懐妊、おめでとうございます。4ヶ月ですね」
そう言われた瞬間、頭を鈍器で叩かれたように目の前が真っ暗になった。
警察病院に来たのは、最近体調が悪かったからだ。吐き気や躰のだるさを感じて、仕事もちゃんとできてない。部下の風見に、今日は病院に行ってきてください、と引きつった笑顔で言われて素直に病院に来たわけだが・・・。内科で調べてもらっても何の診断も出なくて、産婦人科に回され、尿検査を取った結果が冒頭の言葉だった。
「俺が妊娠、してるんですか?」
女性だと言うのにも関わらず、一人称が俺になっている時は相当自分の中で困惑している証拠だ。
「えぇ。赤ちゃんは元気に育ってます」
エコー画像を見ながらニコニコ笑って話す男性の医師に呆気に取られた。髪にちらほら見える白髪と皺を見てお祖父ちゃんが初めて孫の写真を見るような、そんな変な感覚を感じた。
「最近、私に孫が産まれたんですよ。長年喧嘩をしていた長女がやっと家に帰ってき来てくれてね。それで何を言うのかと思ったら、孫を抱っこしてくれと言ってきてね。初めて抱いた孫というのは可愛いものなんだな。と感じましたよ。まぁ自分の子が生まれた時も可愛いとは感じますがね」
自分のことを話す先生に相槌を打つ。零は自分のお腹に手を当てて、ここに子供が居るのだと感じた。まだ胎動も感じられないが、確かにここには赤ちゃんが居るのだとわかった。
「どうされます?赤ちゃん。下ろされますか?」
「・・・いいえ、産みます」
「それは良かったです。では今度の受診日を決めましょうか」
先生と相談して今度の受診日を決めて病院を後にした。そして最初に向かったのは、自分の職場だ。この子を産むと決めたからには、危ない仕事場で働いているわけには行かない。
上司と相談して、引き留められはしたが退職し、警察署を後にした。
あとはあいつの所に行くだけだな。