マイフレンドD

□〜君と僕が幸せになれる方法〜 第13話 後編
1ページ/1ページ

「私、実は妊娠しているんです」
重い口をパクパクさせながら、言葉を紡ぐ零。子供を産んだことのある有希子は新一を抱きながら聞く。シャロンは子供を産んだことがないため、どれだけ大変なのかはよく分からないが、零が重そうに話す限り何か産めない理由があるんじゃないかと考えながら聞いていた。
「私は、今警察学校に通ってるし子育てだってちゃんと出来るかわからない状態で、この子達を産んで育てられないなんて無責任なことは言いたくありません。それは現状を考えての事です。
でも本心は、秀一さんの血が繋がったこの子達を堕ろしたくはないんです。だって、此処に・・・私のお腹に赤ちゃんが宿ってるんです。秀一さんとの子が・・・。命を絶つ何てそんな事私には出来ないんです」
涙を流しながら、零は本心を吐き出した。1度は目の前で殺されそうになった秀一さんの子供がこのお腹の中で命を育んでいる。そんな子供の命を絶つなんて真似は、人の命を奪う人殺しと同じだ。前の時、松田たちを殺した奴らと・・・。
そんな真似はしたくない。でもかと言って、この子達を育てられる保証は何処にもない。生まれる頃には各部署へ配属されている頃になる。配属されたばかりで産休、育休を取れるのか、分からない。
零はお腹を撫でて涙を流しながら考える。そんな姿を見た有希子が、腕の中で眠っている新一を連れて、零の隣に座る。
「零ちゃん、私は零ちゃんの言いたいことは凄くわかる。警察学校に通っている以上、危ない試験だってあるだろうし、生まれる頃になると部署配属も終わっているでしょう‍?不安になるのも当然。そんな状態で子供を育てられるか不安だろうし、でもそれ以上に子供を産みたいっていう気持ちも一番にわかってるつもり。
でもまず、産むにしても産まないにしても秀ちゃんと話し合うことが大切よ」
「はい。ありがとう・・・ございます」
有希子の言葉に頷くと、有希子が笑顔で微笑んだ。零も有希子に向けて涙を拭ったあと笑顔を向けた。

有希子たちと別れ、家に帰ったのが18時頃。零は警察学校から疲れて帰って来るだろう秀一のために、秀一が好きな料理を沢山作って帰りを待った。
そして二十時。ドアが開く音がして迎えに出ようと玄関に向かう零。零の姿を見た秀一が慌てて駆け寄ってくる。
「零、体調は大丈夫か‍?病院に行ったんだろう‍?結果は‍?」
などと質問攻めをしてくる秀一に微笑んで
「それは後で話します。取り敢えずご飯食べましょう?」
言うと、納得した秀一がスーツから着替えるために部屋に向かう。零は、その後姿を見送ると、ご飯と味噌汁を注ぐ。
それを机に置いて居ると、スーツから私服に着替えた秀一が戻ってきた。
「秀一さん、座ってください。ご飯食べましょう‍?」
「あぁ。美味しそうだな」
零の目の前に座った秀一が、料理を見ていつも通り感想を告げる。零も微笑みながら、ありがとうございます、とお礼を言う。
いただきますの挨拶を2人で済ませ、ご飯を食べ始める。
「これ上手いな」
「本当ですか‍?それ、最近覚えたばかりなので自身なかったんですけど、秀一さんにそう言われると嬉しいです」
そうして無事に食べ終わり、食器を片付け終わると、待っていたかのように秀一がどうだったんだと零に聞く。
「体に異常はありませんでした」
零がそう言うと、秀一は安心したようにホッとしてため息をついた。でも、零にとっては次の話が本題だ。
「だけど、私・・・妊娠してました」
零は重い口を必死に開いてやっとの思いで本当の事を告げると、秀一がYES!と叫びながら笑顔で零を抱き締めてきた。
「凄く嬉しいぞ、零!よくやった!」
そんな他人から見たとしても嬉しいと分かるような秀一の反応に零もホッとした。この子達は秀一にとって、愛しい存在になれるんだと思うと凄く嬉しかった。
「でも秀一さん、産んでもいいんですか‍?」
「ん‍?何故だ。産んでいいに決まってるだろう」
震えた声で質問をした零に、何を言っているんだとでも言いたいような顔で秀一が聞いてくる。
「私はもちろん産んで育てたい。ですが、この子達が生まれる頃には配属も決まって働いてる頃じゃないですか。そんな忙しい時期に産んで育てられるのか不安で」
「零・・・」
零の言葉を聞いた秀一が一瞬困ったような顔をしたが、すぐに表情を変えて零に言う。
「最初の頃は雑用や先輩の手伝いだったろう。それならなんとかなる筈だ。昼間はおふくろに頼んでみよう。それがダメなら有希子たちにでも相談すれば良い。俺が休みを取ってもいい。だから産んでくれ、零」
「・・・はい」
涙を流しながら零が頷くので、秀一は微笑んでおいで、と手を差し出すと零は秀一の胸に飛び込んできた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ