マイフレンドD

□〜君と僕が幸せになれる方法〜 第8話
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あれから2ヶ月が経っても、零の情緒不安定状態は治らなかった。零を慰めに来た有希子が、零に触ろうとすると秀一のところに駆け寄って、ごめんなさいと言っていた。そんなこと今までに一度も無かったというのにだ。両親や零や赤井の家族が触れるのには何の変哲もないのに。
それだけならまだしも、零は二ヶ月たった今も毎日の様に夢で何度も魘されている。
最初に夢を見たのは1ヶ月前。零が魘されるのを見た秀一は、魘されている零を起こした。そして抱き締めるといきなり突き飛ばされたのだった。
「いやぁ、触らないで。秀一さんっ、助けてぇ」
そんな言葉に秀一は深く傷ついた。あの時、零を一人ぼっちにしなければ、こんな事にはならなかったのに、と何度も考えた。
それでも未だに泣きながら叫んでいる零を抱き締めて、俺が秀一だと、認識させるまで何度も言い続けた。
「秀一さんっ、秀一さん」
秀一だとわかった瞬間、安心してくれるのかと思ったが、それは違った。何度も何度も秀一の名を呼び続けて、泣き叫んだ。
秀一は、必死に秀一に縋る零を強く抱きしめて、それは夢なのだと何度も教える。俺はちゃんと隣にいる、と教えるとやっと落ち着いたのだ。
それが何度も続いて、秀一の心は何度も壊れかけた。こんなに愛しい零が泣いているのに、自分は何もしてやれない。隣にいることしか、してやれない。と。
零の診断の際に自分のことを相談すると、秀一の零とは少し違った情緒不安定状態にある、と言われた。
「秀一くん、不安や悩みは溜めない方が良いよ。零ちゃんの隣にいるから余計なのかもしれない。悩みや不安なら何でも聞くよ。だから僕に教えてくれないかな?」
担当の先生に聞かれて溜まっていた悩みや不安を全部話した。
「俺は、零の隣に居ることしか出来ないんです。夜、毎日の様に魘される零を見て、俺がもうちょっと早く助けていたらって、何度も思いました。あの日、零を一人ぼっちにしなければこんなことにならなかったんじゃないのかって、何度も何度も考えました」
「それは君のせいではないだろう‍?」
「いえ、俺のせいなんです。今回零を傷つけた男が零に何度も付きまとったために、俺と零はあいつに俺たちが付き合っていることを言った。それが元もといけなかったんです。俺が山本の逆鱗に触れなかったらこんな事にはなってなかった。零を悲しめることも無かったのにって」
不安の元なんてそんな小さな事なのに、それが何個も溜まりに溜まって、不安の渦になっている。多分零だって同じなのだ。今回の事がそれを教えてくれたのかもしれない。自分達の心が壊れ無いようにと、教えてくれたのかもしれない。
そう思うと、何とか前向きになれるような気がした。
「先生、悩み事を聞いてもらってありがとうございました」
「何時でも来なさい。また聞いてあげるからね」
「はい」
診察室を後にして、待機室で待っているだろう零を迎えにいく。
「零、帰ろう?」
「はい!」
呼んでいた本を片付けた零がこちらに来る。今日はとびっきり、零を甘やかそう。そう考え、病院を後にした。
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