マイフレンドD

□恋しくて
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「さよなら、零くん」

赤井にそう告げられたのはもう二ヶ月も前の事。その一言で、本当に別れるんだと切なくなった。
それからというもの電話が掛かってくると、赤井かと何度も期待して携帯を握りしめた。でもその後赤井じゃないと言うことに気づき、後悔するんだ。
初めての恋じゃないはずなのに、どんな誰よりも愛していた。

後にも先にも貴方だった。今更気づいても、もう遅い。

仕事の帰り道、赤井との最後の待ち合わせ場所だった駅のホームにいた。いつだって一緒にいてくれた赤井の事を思い出して、涙が溢れてくる。
涙を拭い、駅を見回しても赤井の姿があるはずも無く、また寂しさを感じた。
どうせなら、もう会いたくないって思うくらいに傷付けてくれたら良かったのに・・・。
赤井が恋しくて、何度も泣いた。恋しくて、赤井への想いが募る。
赤井に会いたくて、胸が苦しい。会いたいのに、赤井には会えない。
心の中は、今もあの日のまま赤井だけの永遠になりたかった。
恋をなくした僕の心を、見つけられるのは赤井だけ。

あの日の事は今でも覚えている。
仕事から帰ってきた赤井が、僕を抱き締めてくれた。
その抱き締めてくれる赤井の服から香水の匂いがしたんだ。
「赤井、女の人と一緒に居たんですか?」
「あぁ、少しな。仕事で・・・。
それよりも零を充電させてくれ。何ヶ月も離れていたから、零不足だ」
何て行って抱き締めてくれた腕を離して、言ってはならない事を言ってしまった。
「赤井のバカ。半年も恋人を置き去りにしておいて、帰ってきたと思ったら、女物の香水を付けて帰ってくる何て・・・。ふざけるな」
言ってしまった後、赤井が凄く傷ついた顔をしていた。しまったと思った時にはもう遅い。
赤井は先ほど玄関に降ろした荷物を持って、僕に微笑みながら言った。
「すまない。・・・さよなら、零くん」
過ちから気付くことだって沢山あった。今回のことは全面的に僕が悪い。毎回喧嘩した時謝るのはいつも赤井なのに今回も謝れなかった。
もう一度だけやり直せるのなら笑顔の赤井が見たい。

赤井が恋しくて、涙をこらえて、会いたくて空を見上げた。
赤井もきっと、この空の下で歩いている。
僕も歩き出さないと・・・。

そう決めたはずなのに、なかなか赤井を忘れられなかった。今日FBI本部に国際電話をしたら、赤井はFBIを辞めたと言っていた。
ポアロに行って真純さんに聞いてみても、秀兄にはあってないと言っていた。
RX-7で赤井との思い出の場所に言ってみたが、そこにはいなかった。
スマホをポケットからだし、赤井に電話をかけた。
呼び出し音が何回もなって、もう留守電に入るかと言う頃、赤井が電話に出た。
「赤井」
『・・・』
「赤井、この前はすみませんでした。貴方の事を全く考えて無くて、言った後後悔しました。
赤井、どこにいるんですか?
会いたい」
『・・・零くん。今から俺は死のうと思う。君に嫌われた以上、君にはもう二度と会えない。
これは自己中ではあるが、最後に君の声が聞けて良かった』
電話先から聞こえた声は本当に今にも死にそうな声だった。何としても引き止めないとと思い赤井に必死に声を掛ける。
「赤井、死なないで。ごめんなさい、赤井のこと好きなのに、あんな事言って。
赤井、愛してます。今、どこにいるんですか?」
涙を流して今まで恥ずかしくて言えなかった言葉を言う。電話口に赤井が泣いてるような声が聞こえた。
『・・・今は、ここにいる』
やっと居場所を言ってくれたのを聞いて、急いで車をそこに向かわせた。

向かったのは、2人で買った家だった。
急いで車を駐車場に止めて、家に入ると赤井の靴があった。
「赤井っ、赤井!」
リビング、トイレ、浴槽、キッチンを回っても赤井の姿は見えなかった。
あとは寝室。
その扉に向こうには人の気配を感じた。急いで部屋に入ると、首の頚動脈を切って首から血を流している赤井の姿が・・・。
「赤井!」
「・・・零、く・・ん」
こっちに気付いた赤井が辛そうに、僕の名前を呼ぶ。急いで救急車を呼ぶと、駆けつけた救急隊員と一緒に赤井を救急車に運び、赤井と一緒に救急車に乗って病院に行った。
着いてすぐ手術を施してもらい一命を取り留めた赤井のそばにずっといた。赤井の手を取って手を握りながら。

翌日の夜赤井の目が覚めた。
昨日から一日中赤井を見ていたので服には少々赤井の血がついているが気にしない。赤井の目が覚めたことが何よりも嬉しい。
「零・・・くん」
「赤井・・・!」
赤井の目が覚めて、僕の名前を呼んでくれた事で、涙が溢れた。
「ごめん・・・、ごめ、なさい・・・赤井・・、ごめんなさい」
泣きながら、赤井に謝った。2ヶ月以上、赤井と一緒に居られなかったから。赤井を失うかもしれないという恐怖を感じ、その上に赤井が死ぬかもしれないという恐怖を感じた上での涙だった。
でもそれよりもっと、赤井が助かったことが何よりも嬉しかった。だから、赤井を傷つけたことをまず謝らないと行けない。
「零くん、泣かないでくれないか・・・‍?大好きな零くんの顔が見えないだろう?」
僕の涙を拭おうと赤井が手を伸ばしてくる。頬に触れる手が暖かくて、余計涙が溢れるが、泣きながらも赤井に微笑んだ。
「零くん、泣かせて済まなかった。零くんを失うくらいなら、もう俺はいない方がいい何て思ったが、違ったな。俺が居なくなろうとしたが為に零くんを泣かせてしまった。本当にすまない。
零くんが俺のことを愛してると言ってくれたお陰で助かったんだと思う。本当にありがとう」
そういった赤井の目には涙が浮かんでいたけど、笑っていた。おいで、と言ってくれた赤井の胸に傷に触らないように抱き着いた。
「零くん、もう一度やり直してくれないか?俺ともう一度付き合って欲しい」
僕の頭を撫でながら赤井が言った言葉に涙を流した。
涙を流しながら頷くと、最高の笑を浮かべた赤井が僕にキスをして来た。

一ヶ月が立ち、結果も良好な赤井の退院が決まった。僕は、半月前に公安を辞めていたから、赤井の退院が決まった時、一旦家に帰り、赤井の服を取りに行った。
病院に戻ると、病室を片づけた赤井がこちらに気づいた。
「零くん」
「赤井、服持ってきましたよ。これを来て、一緒に家に帰りましょう?」
「あぁ。久しぶりに零くんと家にかえれると想うと嬉しいよ」
赤井から抱き締めてくれた。その背中に腕を回す。
「赤井、服着替えましょう?」
「あぁ」

今までお互いに悲しんだ分、零くん/赤井と今までの分も幸せになっていきたい。

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