マイフレンドD

□特別なお客さま
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私にとって明美は、お姉ちゃんみたいな存在だった。
小さな頃から一緒にいて、私より明美は一個年上だったから、本当にお姉ちゃんみたいな存在で、耳が聞こえないことでからかわれていた時、慰めてくれたのは明美だった。
その明美が死んだのは今から五年前だった。シャロンがずっと背中を摩ってくれていたけど、涙が止まらなかったのだ。
結局その日は泣き付かれてシャロンにも手間を掛けたこと、今でも謝りたいと思っている。

今日はその命日だった。

『零、準備OKかしら‍?』
鍵を左手に持って手話で準備できたか聞いてきたシャロンに手で丸を作って返事をした。
先に家を出るシャロンに続いて家を出ると、シャロンが鍵を掛けてくれる。
口に出してお礼を言うと、シャロンがいいのよと笑いながらも返してくる。
取り敢えずシャロンの愛車に乗り込んでシートベルトを着用した。
シャロンが運転中の間は口読術を使ったり手話で会話をするのは無理だろう。

取り敢えず、途中のスーパーで供え物と花を買って墓場へ向うと、そこには何故か秀一さんがいた。
なにか話しているようだけど、何を話しているのかはわからない。ここからでは口読術を使えないからだ。
でも、どういう関係何だろうか。恋人、だったのかな・・・。そんな事を思って胸がすごく締めつけられた。私にとっての秀一さんは一目惚れした相手で初恋の人だから、明美の恋人だなんて聞いたら私は秀一さんに告白だなんて臆病な私には無理がある。
秀一さんが立つ気配がして、強ばっていた顔を緩めて微笑んだ。
「あれ‍?秀一さんじゃ無いですか。どうして明美の墓に‍?」
私の声は自分で聞けないけれどシャロンが綺麗な声らしく、ちゃんと話せているのかいつも不安なのだが、秀一さんにはなるべく自分の声で話したいのだ。だから、会えて手話ではなくこちらに気づいた秀一さんは自分の声で話し掛けたのだ。
『明美は俺にとっては妹みたいな存在でね。そう言う零こそ、明美と知り合いなのか‍?』
明美が妹みたいな存在、という台詞に少し笑ってしまう。私は秀一さんに聞かれたことに応えるために、持っていた花束を置いて、手話で返した。
『はい、そうなんですよ。明美は幼い頃から私のそばにいてくれたんです。優しくて、私にとっては姉みたいな存在でした』
笑いながら答えると、墓の前に行って花束を既に置いてある所に重ねた。
線香を、多分秀一さんが先に備えた跡のある所に置くと手を合わせて目を瞑った。
『明美、そっちはどう‍ですか?私の方はシャロンと一緒にいるから大丈夫ですよ。明美は心配性だから、そっちに行っても私のこと心配していたんじゃ無いんですか?』
そこまで手話で使えた後、もう一つ報告があると心の中で言った。
私、好きな人が出来たんです。今となっては聞けないんですけど、秀一さんとはどんな関係だったんですか?
私、明美の事大好きなんです。秀一さんよりもずっと。明美が嫌ならこの思いは伝えない
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