マイフレンドD

□特別なお客さま
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俺にとって、明美は手のかかる真澄のような、妹のような奴だった。
高校の時に俺に告白をして来てから、俺には友達として接してくれた。だから、好きだと思わせるような行為はしたく無かったのだが、本人に頼み込まれて仕方なく友達として付き合うようになる。
健二は厄介がっていたが、友達ならいいということで納得してくれた健二には悪いことをしたと思う。
明美は、本当に妹みたいだった。
だったと言ったのは、五年前に起きたたてこもり事件で、銃で撃たれそうになった子供を助けて亡くなったからだ。

今日は明美の命日だった。

その日は毎年定休日にしていて、俺は明美用に明美が好きだったサンドウィッチを持って墓場に来ていた。
お盆に1回行ったからまだ雑草も生えていなかった。
取り敢えず水を墓に掛けて拭いて、水を花入れに入れる。
その後、線香を焚いて置くと、手を合わせて目を瞑った。
少しの間そうした後目を開けて、墓に話しかけた。
「明美、今日はお前が好きだったサンドウィッチを持ってきたぞ。お前は最後まで、俺にとっては妹みたいだった。
そのお前が死んで、もう五年たったな。そっちでは元気にやっているか?」
答えてくれるはずもない明美に話しかけると、俺の問に答えるかのように風が俺の頬を撫でた。
持ってきていた、サンドウィッチを供えた。
俺はもう一度手を合わせると、墓を後に空いた。いや、しようとしたのだ。
後から来た後客に、目を奪われてしまう。
「あれ‍?秀一さんじゃ無いですか。どうして明美の墓に‍?」
そう、後客とは零の事だった。
髪を耳に掛けながら、微笑み話しかけてきた零。耳は聞こえないはずなのに、健常者の様に話す零に見惚れながらも聞かれたことに答えた。
『明美は俺にとっては妹みたいな存在でね。そう言う零こそ、明美と知り合いなのか‍?』
微笑みながら手話で答える俺に、天使のような笑を向けた零。
俺は、零に一目惚れという奴をしていた。零の笑顔一つでイチコロだ。
零は俺の質問に答えるために持っていた花束を置いて、手話で答える。
『はい、そうなんですよ。明美は幼い頃から私のそばにいてくれたんです。優しくて、私にとっては姉みたいな存在でした』
昔の事を思い出したのか、少し子供みたいな笑を浮かべながらだ。
俺はコロコロ変わる零の表情に心臓がドキドキしっぱなしだ。そんな俺をほっといて、持っていた花をもう一度腕に抱えて、墓の前に行った。
『明美、そっちはどう‍ですか?私の方はシャロンと一緒にいるから大丈夫ですよ。明美は心配性だから、そっちに行っても私のこと心配していたんじゃ無いんですか?』
何て、微笑みながら手話で話す零の横顔は、本当に子供みたいな顔だった。そんなあ笑顔を見せてる零に俺は本当に恋に落ちてしまった。
この年まで人を好きになったことはないが、どうしても零だけは守ってやりたい。幸せにしてやりたいと思ったんだ。手話もいいがもっと零の声を聞きたい。綺麗な声で俺の名前を読んで欲しい。そう思ったんだ。
零にとっては今の俺の印象は、いとこのお友達としてしか見てもらえてないだろうが、それはこれからでも変えていける。
俺のペースでじっくり思いを伝えていきたい。
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