マイフレンドD
□好きです、秀一くん(6)
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こっちに戻ってきて、1週間が立った。
私は昨日から仕事に復帰している。本当なら休暇は1ヶ月の予定だったんだけど、家にいてする事も無く、仕事に復帰した。
上司に休養を取らせてもらい、ありがとうございます。今日から復帰させてくださいと昨日電話をすると、君が居てくれた方が助かるよ、こちらから復帰してくれと頼むところだった。と言われ苦笑してしまう。今でも、思い出せば苦笑してしまうけれど、自分がそれほど信頼されている事を嬉しく思った。
今日はお盆休みに入っているから、私は久々にポアロに向かった。
そこには、顔なじみの梓さんと蘭さんと新一くんが居た。
「安室さん、お久しぶりです。元気にしてましたか?」
私の事を安室さんと昔の呼び名で呼び、声をかけてくれる梓さんに返事を返す。
「えぇ、元気ですよ」
「零さん」
私の本名のファーストネームを呼ぶ声に振り返ると、新一くんが居た。組織を壊滅する時に一緒にいた仲間だ。私はコナンくんも、新一くんの小さな頃も知っているから、大きくなったなぁ何てまるで母親の様に思う。
「あぁ、新一くん。今日は蘭さんと一緒なんですね」
「こんにちは、安室さん」
蘭さんもまた私の事を安室さん、と呼ぶうちのひとりだ。安室零と名乗っていた頃、皆には安室さんと呼ばれていたからそのくせが抜けないみたい。
「こんにちわ、蘭さん。毛利探偵はお元気ですか?」
「えぇ、相変わらずですけど、元気ですよ」
苦笑しながら言う蘭さんに私も笑ってしまう。
蘭さんのお父さんは毛利小五郎さん。昔は眠りの小五郎として有名な探偵だ。昔はといったのは、新一くんがコナンだった頃、博士の道具を使って毛利さんの手柄を立てていたからで・・。姿が戻った新一くんには必要の無いものだ。
「梓さん、珈琲一杯貰えますか?」
「はい。あっ、でも安室さんが入れるような美味しいものには成りませんよ?」
「お世辞言っても何も出ませんよ?それに、梓さんの珈琲だって美味しいです」
何て笑顔で答えると、カウンター席に腰を掛ける。すると懐かしい声と共にドアが開く音が聞こえた。
「零」
「っ!?」
私は空耳かと思い、驚きながらも入口を見た。
そこには・・・、赤井がいた。赤井が私の名前を呼んでいる。
私は形振り構わず赤井に抱きつく。
「赤井っ」
「零っ!」
久方ぶりの煙草と赤井の匂いに、あぁ、赤井だと感じる。
後ろから新一くんたちの視線を感じるが、気付かない振りをして赤井に問いかける。
「赤井、帰るのは三週間も先でしたでしょう?どうしたんです?」
「あぁ、それか。1ヶ月掛かると思ってた事が、結構早く終わってな。事故処理も終わったから零に会いに帰ってきた」
良くそんなことを恥ずかしげもなく言えるな!何て、前の自分なら言ってしまうかも知れないけど、今の自分は違う。赤井が好きで、愛されている自覚がある。それがあるからこそ、今の自分があるんだ。赤井が自分に会いに来てくれたと言う事実が何より嬉しい。
「ありがとうございます、赤井」
大好き。そう言葉にして、口付けを受けようと目を閉じると、新一くんの声が聞こえ此処がポアロだという事を思い出した。
「あの・・・」
会えた勢いで好きだって言ってしまったことを思い出し赤面する。しかもキスしようとまでしていた。
「あぁ、ボウヤ、久しぶりぶりだな。6年ぶりか?」
「えぇ、多分そのくらいですよ。ていうか赤井さん!ボウヤはやめてください!もう23ですよ?」
「あぁ、すまないな、新一くん」
「まったく・・・」
何て子供のように頬を膨らます新一くんに微笑む。なんと言うか、幼いコナンくんを連想させていて可愛い。赤井にボウヤと言われる度にこんな感じな2人を見ていると、あぁ、戻ってきたんだなって実感する。
「あっ、赤井さん紹介します。俺の彼女の蘭です」
「はっ、初めまして」
何て初心しい顔を見せながら言う蘭さん、可愛いな。新一に俺の彼女≠ニ言われることが嬉しいんだろうな、と思う。まぁもし赤井が私の事をそんなことをしたら殴ってるけどな。
「あぁ。新一くん、改めて紹介する。俺の彼女である降谷零だ」
思っていた事を実行され殴ろうと思ってたのに、本当に嬉しいというような笑を浮かべた赤井に何も出来なくなってしまう。
「よろしくね、新一くん、蘭さん」
私も微笑んで、新一くんたちに改めてよろしく、と言った。こんな事を改まって言うと何か照れるな、何ていう声が隣から聞こえる。
「赤井?」
「嫌、何でもない。それより零、後で話がある」
改まったかのように、赤井に言われ頷いた。
赤井の話と言うのは何だろうと、心のどこかで考えていた。
夕方、家に赤井と一緒に帰り、ご飯の準備を始めようとすると、赤井に呼び止められた。
「零、ご飯の前にいいか?話をしても」
改まって言われ、別れ話なのかな、と勘ぐってしまう。私は不安な顔を浮かべて頷くと、赤井が座っている隣に腰をかけた。
「何ですか、話って・・・」
恐る恐る赤井に訪ねる。さっきから嫌な予感しかしないから、本当に別れ話なのかと思ってしまっている私。俯いて赤井が答えるのをまった。
「零、俺と結婚して欲しい。俺と同じ赤井になってくれないか?」
全然思っていたのと違う話に驚いて顔を上げた。そこには、優しくて照れたような顔をして赤井がいる。やっと赤井に言われて言葉が、心に届いて涙が溢れた。
「零っ?」
「・・・赤井」
名前を呼びながら、赤井に抱きついた。だって心から嬉しい。赤井にプロポーズされた事が、何よりもすごく嬉しかったんだ。
泣きながら赤井の名前を呼ぶと、赤井は何も言わずに背中を撫でてくれる。
そうして数分抱き合っていると、赤井が話しかけてきた。
「そろそろ返事をもらってもいいか?」
微笑んだ赤井に飛び切りの笑顔を向けて頷いた。