マイフレンドD

□好きです、秀一くん(5)
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次の日、いつも通り朝食を作り皆を起こした。
こんなに良く寝てるのに、良く隈ができるな。何て思いながらも、起きてきた秀くん達を見て苦笑する。3人が3人とも同じ顔をしていた。

「早く、顔を洗ってきてくださいね。ご飯出来ましたから」

三人に声を掛け、洗面所に向かわせる。皆が顔を洗っている所を見て安心すると、近くにあるタオルが入っているタンスからタオルを三枚出す。

「はい、秀くん。これで顔拭いて下さいね?」

「あぁ」

まだ眠そうな顔をして受け取る秀くんに笑ってしまう。母性本能を擽られるって言うか何ていうか。
その後真純ちゃんと秀吉くんにもタオルを渡して、一緒にリビングに戻り朝食を食べた。

話さないといけないとは思っているのに、中々口には出せない。

「どうしたんだ、朝からそんな顔して」

1人だと思っていたのにそこには、いつの間にか秀くんが居た。

「いえ、何も・・・」

「そういう顔をしてないぞ。何も無いと言うことは無いだろう?零」

赤井と同じ顔で、同じ声で問い詰められ私は観念したかのように、話し始めた。
昨日、赤井から電話がかかってきた事。その時に会いたいと思って口に出した事。むこうへの戻り方が分かったことを1から10まで喋る。
私が言った話を聞いた秀くんが、口を開いた。

「零、こっちに来たのは赤井≠ノ会いたかったからだろう。零が言いたいことは分かるが、俺達の事は気にせず向こうの世界に戻ってくれた。
零が居るべき世界は向こうなんだ。帰る場所はあいつの元だろう‍?」

そう言って、部屋を出ていった秀くんの後ろ姿を見て、胸が痛くなった。胸を針で刺されたような痛みに生理的に涙が出てくる。
秀くんの事が好きになっていた事に、今更気付く。気付いたことによる嬉しいと思う気持ちと、辛い気持ちとが入り交じり、涙を流しながら秀くんの部屋に行った。
タンスの前で立っている秀くんの背中に抱き着いた。

「っ零‍?」

「秀くん・・・っ、好きです。私、秀くんが好きです」

涙を流しながら、秀くんに告げる。叶わない恋でもいい、伝えるだけで・・・。
私が必死の想いで告げ終わると、秀くんがこっちを向いて抱きしめてくれた。そして耳元で・・・。

「俺も零が好きだ」

涙声で囁かれた。秀くんに告白され涙が溢れる。
叶わない恋でもいい、伝えるだけでもいい。と思って居たのに、両想いだと伝えられただけでこんなにも嬉しい。
ギュッっと力強く抱きしめられた後少し話され、口付けを落とされる。舌が捩じ込まれ、私の舌に絡められた。
何度も何度もお互いの存在を確かめるように抱きしめ合い、口付け合った。

それでも夜になってご飯を作ってお風呂に入るのは忘れずに行った。真純ちゃんを眠らせ、秀吉くんが眠ったのを確認すると秀くんの元に向かう。

「二人とも寝たのか?」

「はい。二人ともぐっすりと眠ってます」

「そうか。零、おいで」

秀くんが自分の隣を指して、ポンポンと叩く。おいで、と言われて私は秀くんが刺したところに座った。

「零、好きだ」

秀くんが私を抱きしめて言う。
大好きな秀くんに抱きしめて言われ、私もです、と返す。
秀くんにベットに倒され、上から私を見つめる秀くんの首に腕を回した。

「零、愛してる」

私の上に覆い被さりキスする秀くんに微笑んだ。


翌朝、秀くんに頼まれた通り、秀くんより先に起きて秀くんの部屋を出た。
携帯を握り締め、赤井に会いたいと一心に願い携帯画面を開くと眩い光に包まれ、身体が浮く。以前と同じ様に眠気が襲って来て自然に目を閉じた。

目が覚めて、居た場所は紛れもない私の部屋だった。秀くんと約束したから、もう泣かない。
目を閉じて深夜の秀くんの言葉を思い出す。

「零、今日の朝俺が目覚める前に向こうの世界に戻れ」

素肌の秀くんに抱きしめられて、言われた言葉はあまりにも残酷な言葉だった。
私は、どうしてと返した。

「俺の一方通行だと思っていた気持ちが、一方通行じゃない、零も俺が好きなんだとしれて嬉しかった。今、零が俺の腕の中に居てくれる。それだけで俺は満足だ。・・・愛してる、零」

首を振って涙を流した。私も愛してる、と言いたいのに言葉に出来ない。
秀くんが言葉を続ける。

「だが、これ以上俺が零を縛り付ける事は出来ない。赤井と言う大切な恋人のいる君に、無理強いはしたくないんだ。だが信じてくれ、零。零の気持ちを疎かにするわけじゃない。
でも君には帰る場所があるだろう?仕事だってあるだろうし、友達だっているだろう。
そんな君がこちらにいたままでは心配する人だっているし、悲しむ人もいる。
だがら、零は向こうに帰るべきだ。でも俺が見ている前で君が消えるのを見たら踏ん切りがつかない。
だから、俺が起きる前に向こうに帰って欲しい」

髪を撫でながら言う秀くんに涙を流しながら頷いた。
もういい、もう言わないで!と言うように何度も頷いた。

「零、これはお願いだ。向こうに帰ったら俺を思って泣くのは辞めてくれ。俺がそっちに飛んでいってしまうかも知れないからな。だから笑っていてくれ。
俺が抱きしめている間は泣いてもいいから、向こうに帰ったら俺を思って泣かないでくれ。頼む」

私は、秀くんの顔を見て何度も頷いた。そうしたら、秀くんが涙ぐみながらありがとうと言った。


例え、それが夢だったとしても、私はずっと貴方のことを忘れません。

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