マイフレンドD
□好きです、秀一くん(3)
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それから1週間が過ぎた。
こっちに来てから1週間と二日が過ぎたけど、中々元の世界に戻る方法が検討付かない。
食費も秀くんに出してもらっているから申し訳なくて昨日からポアロでバイトを初めた。
自分の世界でもここでバイトをしていたから、仕込みなどはお手の物。
「あぁ、安室さん、こんにちわ」
「あっ、いらっしゃい新一くん」
こちらの世界での工藤新一くん。バイトをし始めた当日、昨日の事だが、新一くんが来てくれた。
小学校1年生だと言ってたから、真純ちゃんの同級生かな。
今日は新一くんの他に、新一くんのお友達らしい2人の女の子も来ている。
「君たちは新一くんのお友達だよね?」
多分、自分が居るべき本当の世界でもポアロに来てくれてた蘭ちゃんと園子ちゃんだろうな。と思う。
「はい。こんにちわー」
「こんにちは!こちらへどうぞ」
新一くん達をカウンター席に座らせて、私はカウンターに戻る。注文を聞く前に、調理室に行って作り置きしていたクッキーをお皿に入れて、水が入った三つのコップと一緒にトレイで運ぶ。
「はい、お水とクッキーです。良かったら食べてね!」
「ありがとう、安室さん」
「お礼を言われるほどでは無いよ。新一くん。私は好きでしてるんだから。それより、注文はどうするかな?」
洗い物をしながら、小さな3人のお客さんに注文を聞く。
「んー、じゃぁ俺はアイスコーヒーで」
「新一くんはいつもそれだなぁ」
何て笑いながら、新一くんの注文通りにアイスコーヒーを入れて新一くんの前に置く。アイスコーヒーと一緒に、暇潰しに作った新一くんの大好きなレモンパイを皿に入れて渡す。
「確か新一くん、好きだって言ってただろう?良ければどうぞ」
「ありがとうございます!」
「君達は注文、どうする?」
座ったまま、一言もしゃべらない2人に声を掛ける。すると園子ちゃんが遠慮がちに答えてくれた。
「さっ、サンドウィッチを」
「サンドウィッチね。君もそれでいいかい?」
蘭ちゃんに問いかけると、頷いてくれる。
かしこまりました。と、言うとカウンターの奥にある調理室に向かってサンドウィッチを作った。
2人分のサンドウィッチを作り終わり皿の上に並べると、カウンターに戻って蘭ちゃんと園子ちゃんに渡す。
「こんにちわー、零姉〜!来たよー」
「あっ、真純ちゃん。それに秀吉くんも。あれ?秀くんもいらしたんですか?」
ドアが開く音が聞こえてそちらを見ると、真純ちゃんと秀吉くん、それに秀くんまで来ていた。
「あぁ、夜ご飯はどうすると真純に聞いたら君の料理が良いと言ってな。
バイト中だと言ったのだが、どうしてもと言って聞かんのだ」
「分かりました。じゃぁ3人とも、カウンター席に座ってて下さい。
今はお客さんも少ないので、大丈夫ですよ。秀くんも学校帰りなのにわざわざここまで来てくれてありがとうございます。明日からは、昼までに作っておきますから、それを温めて下さいね」
「承知した」
真純ちゃん達をカウンター席に座らせて、調理室に向かう。夜ご飯用に、買い物をしておいて良かった。シフトは昼の一時から八時時までなので待ってられるだろうと思ったのが間違いだった。
普通だったら夜ご飯は七時くらいなのに、それを確認しなかったのが悪かったかな。
私は、少し反省しながら、夜ご飯を作っていく。
十分ぐらいで完成して、それを皿に注いで持っていく。
「お待ちどーさま。ごめんね、真純ちゃん。明日からはちゃんと作り置きしとくからね。
今日は焼きそばだよ。秀吉くんも」
2人に焼きそばが乗った皿を渡す。
もう1度調理室に戻り、秀くんの分の焼きそばに紅しょうがを乗っけると、カウンターに戻って秀くんに渡した。
「秀くんはこれが無いと食べられないでしょう?」
「あぁ、ありがとう零」
「いえ。・・・あっ、新一くん達今日は大したお構いも出来なくてごめんね?」
珈琲を飲み終わった新一くんと、サンドウィッチを食べ終わった蘭ちゃん達が席を立つのが見えて慌てて駆け寄る。
「ううん、今日はありがとうございました。安室さん」
「いえいえ、どう致しまして」
「あっ、今日の珈琲の代金忘れてた。
はい、安室さん」
ポッケから、250円・・・珈琲の代金を出して渡してくる新一くん。
「ありがとう、新一くん。また来てね!」
「あの、サンドウィッチの代金、払いますね」
蘭ちゃんと園子ちゃんが私に初めて口を聞いてくれた。しかも、わたしに問いかけてくれる。
「ありがとう、二人とも。また来てね」
二人の頭を撫でて、お礼を言うとサンドウィッチの代金を受け取った。代金は、カウンターにあるレジのお金を入れる所に入れる。
「零姉、じゃぁまた後でね!」
「零さん、ご飯ありがとうございました」
「零。代金は良いのか?」
「あぁいいんですよ。こんなこともあろうかと、具材を買っておいたので」
秀くんに微笑みながら言うと、お礼を言われる。いつにもない優しそうな秀くんの微笑みに胸を奪われた。
私も秀くんに微笑み返した。
今日の日のような日が続きますように。とこの頃から心のどこかで思っていたのかも知れない。