マイフレンドD

□好きです、秀一くん(2)
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翌日、中学生の秀吉くんと小学生の真純ちゃんは土曜日なので休み。秀くんは高校生で受験生なので休日でも学校なので先ほど家を出た。
昨日、秀くんに・・・。
「携帯は使えないのか?」
と言われて、試して見たけど真っ暗なまま、画面が映らなかった。
明日も試してみろ、と言われてたので取り敢えず電源を入れてみると・・・。
画面が映った。電波も圏外には成っていない。
取り敢えず、今日から1ヶ月休養を取ろうと風見に電話をしてみる。
電話も繋がった。

『はい、もしもし』

「降谷です。風見か‍?」

『降谷さん‍?どうしたんですか?』

「風見、少し急用があって1ヶ月休みを貰えないか?」

『それは、大丈夫ですよ。有給たっぷりあるんで、1ヶ月ぐらい私が降谷さんの代わりに部長に連絡しておきます』

「ありがとう」

電話を切って、取り敢えず休養が取れた事に一安心する。それにしても、何で昨日は真っ暗だったのに今日になって使えるようになったのか・・・。
私は考えながらもう1度電源を入れて見ても、もう使えなくなってる。

「零姉〜!」

「あっ、どうしたの‍?真純ちゃん」

ふと気付くと足元に真純ちゃんがいて、私を呼んでいた。真純ちゃんの目線に合わせてしゃがみ、どうしたの、と聞くとお腹減ったと言う真純ちゃん。
私はちょっと待ってねと言ってキッチンに向かう。
丁度12時40分。小学生なら丁度お昼ご飯を学校で食べている時間だろう。

二十分程でご飯を作り終わり、秀吉くんも呼んでご飯を一緒に食べる。

「んー、やっぱり美味しいね!零姉の作った料理」

「そう‍?ありがとう、真純ちゃん」

隣の席に座っている、私の料理を褒めてくれた真純ちゃんの頭を撫でながらお礼を言う。
秀吉くんが1口野菜炒めを橋で口に運び食べる。

「美味しい・・・!零さん、凄く美味しいです」

「本当?ありがとう、秀吉くん」

私も1口食べて見る。少し薄めの味付けで、いつも作るものより凄く美味しい。やっぱり一人分を作るよりも沢山の人の分を愛情込めて作る方が絶対美味しいんだろうな・・・。
何て思いながらご飯を食べる。

夕方、秀くんが帰ってきた。少し疲れた様な顔をしている秀くんに声をかけて見る。

「大丈夫ですか?秀くん。疲れたような顔してますけど」

「あっ、あぁ。女子に付きまとわれてうんざりだ。それより真純達は‍?大人しくしてたか?」

「えぇ。若い頃から大変だったんですね、秀くん。弟達の面倒を見ながら、宿題とかしてたんでしょう?」

えらい、えらい。

頭を撫でて秀くんを褒める。されるがままに目を瞑る秀くんに母性本能が擽られた。自分に子供がいたらこんな感じ何だろうな・・・何て思いながら自分の頬が緩むのを感じた。
可愛い秀くんに微笑んで、約十秒くらい撫でていた頭から手を離した。それに気づいた秀くんが終わったのか、と言いながら顔を上げる。

「それより零、携帯は繋がったのか?」

「あっ、それなんですけど、1回だけ繋がって部下に連絡しました。1ヶ月休暇を取らせてくれって。
まぁ部下には逆に休暇を取ってくれてありがとうございますって礼を言われましたけど」

「ほぉ〜・・・。良かったな、零」

「はい。正直、今まで休んで居なかったんで仕事場に行けないって言うのは少し寂しいですね」

こんな年下の、ましてや自分の恋人の若い頃‍?に弱い顔を見せてしまう。赤井には見せた事が無いのに、だ。何故か、秀くんには弱い所を見せてしまう。いくら赤井でもこんな弱い所を見せられない。
何で秀くんにはこんなにも弱い顔を見せられるんだろう。
不思議に思うが気持ちを切り替えないと、察するのに優れている秀くんに気付かれてしまう。
そんなことを思っていると、秀くんが喋る。

「別に無理しなくていい。こちらの世界に来たばっかりに不安なことが増えた上に仕事場に行けないんだ。寂しくならない訳がないだろう。普通にしようと気を貼っていては不安が溜まってストレスになってしまう。不安な時は不安だと、誰でもいいから話すんだ。今気強く聞いてくれるような奴と酒でも交わしながら。零、君はあちらに帰るべきだ。早めに帰れるよう、帰り方を調べよう。現実の世界、つまり零の世界にいる俺に不安をぶちまけてやればいい。あちらの世界の俺がもしも長期期間ほっといて置いて謝りもせずに帰ってきたなら殴ってやれ。
君をもう二度と離れるな、と誓わせてやれ。君の願いなら、赤井というヤツは何でも聞いてやるだろうから。
だから不安な時は誰でもいいからとにかく頼れ」

赤井への文句を時々含みながら私を慰めるセリフを言う秀くん。何時もは口下手の筈なのに滑舌よくポンポンと出てくる言葉に呆然とする。

「ありがとう、ございます」

シューっ。

リビングでそんな音聞こえて、同時に真純ちゃんの叫び声が聞こえる。

「零姉〜!鍋からお湯こぼれてるよー!」

「あっ、いけない!今ラーメン作ってたんだった。秀くん、早く着替えて来てくださいね!」

真純ちゃんの叫び声でラーメンをつくていたことに気づき、キッチンに向かいながら秀くんに私服に着替えるように促す。

「ごめんね〜!真純ちゃん。今火を止めるから」

教えてくれてありがとう、真純ちゃん。

頭を撫でて言うと微笑む真純ちゃん。私はお礼を言い終わると、火を止めに向かう。


その頃、アメリカではある男が壁にもたれて携帯を眺めて微笑んでいた。
この男こそ、この世界での赤井秀一であり零の恋人である男だ。

「後1ヶ月後、君に会える」

赤井はここ5年FBIの任務に追われ、日本に居る零に1度も会えていなかったのだ。電話すらたまにしか出来てない。もう三ヶ月間は零の声を聞けていない。
あと1ヶ月、1ヶ月で会えるのだ。
嬉しく無いわけがない。

「ちょっとシュウ!休憩は終わりよ!早く来て」

ジョディに呼ばれ携帯画面を閉じて、会議室に向かった。

1ヶ月後、零はこちらの世界に戻れるのだろうか。赤井はこちらの世界にもどった零に逢えるのだろうか。
どちらにしても、零が帰る方法を見つけなければかなわないだろう。

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