マイフレンドD
□好きです、秀一くん(1)
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私、降谷零です。公安に勤務していて、上司と言う立場に立って居て仕事場では数少ない女上司として仕事に励んでます。
まぁそんなこんなで、今日も夜中まで残業が続いていて帰ってきたのは夜中の3時。化粧もグチャグチャだし、体も疲れて居るのでお風呂に入ろうと、風呂場に向かった。
シャワーでメイクを落として、湯船に浸かる。よっぽど疲れているのか、必然的にため息が出てしまう。
取り敢えず十分程浸かり髪と身体を洗い終わると、お風呂から上がりバスタオルで拭いてバズロープを来て寝室のベットの上に寝転ぶ。
最近はこの繰り返しばっかり。女性としてどうなのかとも思うけど、しょうがない。仕事が仕事であるがために、家に帰るのは殆ど深夜だし寝るのはお風呂に入ってからだから大体四時。
取り敢えず、部屋着に着替えようとタンスを開ける。スカートにTシャツがあったのでそれに着替えてまたベットに寝転んだ。
寝ようと思って目を瞑るが、なかなか寝られず・・・。最近ハマっているゲームでもしようと携帯をとって画面を開くといつもは無い凄まじい光を放った。
それと共に私の体が浮く気がした。眠気が身体を遅い、目を瞑る。
そして目が覚めると、いつもの自分の部屋では無い所に居た。何故か保健室?にあるベットの上で寝転んでいた私。
此処何処?
「あぁ、やっと目が覚めたみたいだな」
制服を着た男子が私に話しかけてくる。その声には聞き覚えがあり私が顔を上げると、そこには赤井秀一がいた。
「んな、なぜ赤井が?」
「確かに俺の名前は赤井秀一だが、君に会った覚えはないぞ?」
「何言ってるんですか、赤井。それより、此処は何処なんですか?」
「此処は、俺が通っている学校の保健室だ。君が校庭で倒れているところを見たから、ここへ連れてきた。
それより、君は誰だ?俺は君に1度も会った事はないぞ?」
なるほど、此処は学校の保健室で私が倒れていたから運んでくれたと。
自分のいる場所を理解して、その後に続いた言葉に絶句する。最初は冗談だと思ってたんだけど、冗談ではないらしい。っていうか私、携帯に吸い込まれたの?
「はは。君、心の声なのかなんなのかは知らないが口に出ているぞ」
赤井に笑われて、自分が声に出していたことに気づく。赤井ってこんなにも表情を顔に出す男だったのか・・・と、思うが今はそれどころじゃない。
「どうしよう。自分の世界に戻らないと、仕事が・・・」
「自分の世界?どういう事だ」
赤井が真顔で聞いてくるが、自分だってわからないことを人に教えられるわけが無い。取り敢えず、今わかってる状況だけでも説明してしまおう。
目の前に居る赤井に今の状況を取り敢えず説明する。
「ほぉー。それは興味深いな」
「ほぉー。じゃ無いですよ、赤井。っていうかどうやって帰るんだろう」
「それなら帰り方が解るまで、家に居るといい」
赤井が、微笑みながら言ってくれたので思わず頷くところだった。というか、赤井が家に留めてくれる?あの赤井が?身元もわからない私を?
「赤井、大丈夫なんですか?こんな何処の誰かも分からない女を家に止めるなんて」
「あぁ、だから名前を聞こうか。そっちは俺の名前を知っているようだが一応俺も名乗ろう。
赤井秀一だ。老け顔に見られるようだが、これでもまだ高校3年生だ。よろしく」
赤井ってこんなに優しかったんだな。と思いながら、赤井の自己紹介を聞く。高3ということは、十七か十八くらいか。
赤井の顔は確かに老けてはいるが、結構整っている方だと思う。私が知っている赤井よりも確かに若い気がする。
公安に勤務しています。いつも実年齢より十歳若くみられるんですが、これでも29歳です」
「ほぉー、それは俺も検討がつかなかったな。俺より若いのかと思っていた」
ネクタイを緩めながら、言う赤井に私は少し見惚れてしまった。もう三十路近いオバサンが十歳以上歳が離れた男に見惚れるなんて・・・。
「赤井、何て呼んだ方が良いですか?いくら何でも名字呼びじゃ可笑しいでしょ。歳も離れてるんですし」
「じゃぁファーストネームで呼んでくれ。秀一でも秀でも・・・」
「えっ?良いんですか?じゃぁ秀くんで」
「あぁ、それでもいい。君の事は何と呼べばいい?」
いくら何でも、君と言う呼び名はいけないだろうと言われて頷く。赤井、もとい秀くんにもファーストネームで呼んで貰おうかな。
「じゃぁ私もファーストネームで呼んで貰えますか?」
「あぁ。じゃぁ零、でいいか?」
「はい。それで良いです」
呼び名も決まった事で、何時までもここにいる訳にも行かないだろうと思い、保健室を後にした。
それからは、秀くんの家に行く前に買い物を済ませた。いつもご飯はたまにしか自炊をしないというから、夕飯のおかずに使う材料と自分の服と下着を何着か買って、秀くんの家に来ていた。
家に入ると、二組の靴があるので誰かがいるのだろう。
「秀くん、兄妹とかはいるんですか?」
「あぁ。もう帰ってきているみたいだな」
廊下に上がりながら秀くんが答えてくれる。
私も秀くんの後に続いて、廊下を歩いてリビングに入る。
「あれ〜?秀兄の恋人さん?」
後ろから声を掛けられて振り返ると、恐らく世良真純・・・ううん秀くんの妹の真純ちゃんがいた。
「真純、零は俺の友達だ」
「あっ、秀兄。おかえりー!」
「えっと、真純ちゃんだよね?私は降谷零、宜しくね」
「うん!」
「真純、秀吉はどこに居る?話があるんだが」
「んー吉兄だったらリビングにいると思うぞ。僕がさっきジュース取りに行った時もリビングで本と将棋盤とにらめっこしてたからさ〜」
「そうか」
秀くんに妹の真純ちゃんがいるのは知ってたけど、弟が居たなんて。まさかとは思うが、秀吉って羽田秀吉じゃないよね?
秀くんの後をついて行きながら考える。まぁ、この予感が的中しなかった事は1度も無いけど。
「あぁ、兄さんお帰り。・・・えっとそちらは?」
やっぱり・・・。眼鏡を掛けては無いが、面影がある。将棋の7冠王である羽田名人に間違いない。やっぱり予感的中。
「秀吉、話があるんだがいいか?」
「あ〜、うん」
将棋をしていた秀吉くんの邪魔をするのはしのびないが、話があると言う秀くんの言葉に頷いて本に栞を挟んだ秀吉くんがこっちに来る。
リビングにあるソファに腰を掛け、この家でお世話になるんだから私が言わないと、口を開く。
「えっと、私降谷零というんですが、突然来たからびっくりさせちゃったよね?ごめんね。
実は私、異世界から来ちゃいまして帰り方がわかるまで家に泊まるといいと言う秀一さんの言葉に甘えてここへ来てしまったの。私、二人のお兄ちゃんより年上なの、これでも」
「えっ、零姉は秀兄より年上なの?」
「えぇ。真純ちゃん、さっきはお兄ちゃんの友達だって嘘ついてごめんね?」
さっき嘘ついてしまったことを真純ちゃんに謝った。真純ちゃんは笑顔で気にしないでと言われて、お礼を言う。
流れを見ていた秀吉くんが私に話しかけてくる。
「零さんは兄とは実際の世界では知り合いだったんですか?」
鋭いな、秀吉くん。私は秀吉くんを見て頷き赤井のことと秀吉くんたちのことも少し話す。
「そうだよ、私と秀くんとはあっちの世界でも知り合いです。向こうの世界では秀くんのことを赤井と呼んでいるので赤井と呼びますが・・・。
赤井とはある事件が原因で出逢いました。でも向こうでの赤井とは最近あっていません。
赤井もFBI捜査官ですから忙しいのは知っていましたけど、恋人なのに放って置かれてるのは少し寂しかったです。こっちに来たのはそれが原因かも知れません」
こっちに着いた時にいた場所は赤井が通っている大学だった。
考えてみればそれが原因なのかもしれない。五年間も赤井に会えなかったさみしさから、心が赤井に会いたいと叫んでいたんだろう。私の知らぬ間に。
「それで零はオレの事を見た時驚いていたんだな」
「はい。こんなところに赤井がいるはずないって思ってたんです」
「そうか・・・」
「・・・零さん、辛い話を聞いてしまってすみません」
秀吉くんは私が辛そうな顔をしたのに気付いたのか、私に誤ってくる。私は気にしないで、っていうんだけど、律儀な性格をしている秀吉くんは頭を下げたままだ。
ぐぅぅ。
とお腹がなった音が聞こえ、私はそっちを見るとつまらなそうな顔をした真純ちゃんがたっていた。
「秀兄、お腹空いたぁ」
「あぁ、真純ちゃんごめんね?もう六時だもんね。1時間ほど掛かるけど、ちょっと待っててくれる?今からご飯作るから」
慌ててキッチンに向かい、先にご飯の準備をする。米を磨いで、磨ぎ終わった米を釜に移すと水を測り、釜を炊飯器の蓋を開けて入れると、炊飯のスイッチを押す。
「零、俺も手伝おうか?」
いつの間にか制服から着替え終わっている秀くんが私に手伝いを申し出てくれる。
「じゃぁ、鍋に水を入れてこのじゃがいもと人参と玉ねぎを湯掻いてください。味噌汁を作るので鍋は小鍋でお願いします」
「了解」
秀くんに切ったじゃがいも、人参、玉ねぎが入ったボールを差し出す。
すぐに受け取った秀くんは私に言われた通り作業を勧めていく。
そして1時間後、料理の方も出来上がった。
「わぁ、今日は零姉の手作り料理かぁ〜!しかも僕が好きな肉じゃがまである」
零姉、ありがとう!
笑みを浮かべてお礼をいう真純ちゃんに、どういたしまして、と答える。
ソファーに座ったままの秀吉くんの元まで行って話しかける。
「秀吉くん、ご飯になったよ。今日は肉じゃがと味噌汁だけど、明日は秀吉くんの好きなラーメンにしようね!」
「何で僕の好物を知ってるんですか?」
「ん?秘密・・・、かな。a secret makes a woman moman」
昔の知り合いが良く言っていたセリフを秀吉くんに言う。賢い秀吉くんなら意味がわかるだろうね。
取り敢えずご飯食べよう、と誘うと秀吉くんも立ち上がり、リビングに向かった。