マイフレンドB

□中編
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此処は、何処だ?
俺が目が覚めていた場所は、真っ暗だった。
周りの見渡しても何一つ無い場所。

そっか、俺・・・死んだんだっけ。

やっと確信して、力が抜けたように座り込む。
快斗に裏切られて、もう生きていく意味が無くなったから。
俺は思い返して顔を伏せた。伏せると同時に涙が次々と溢れてくる。

こんなにも、俺は快斗の事が好きで・・・好きで・・・大好きで・・・。
だから裏切られたショックが大きかった。胸に大きな傷を負った様な感じだった。

俺が少しの間泣き続けていると、母さんの声が聞こえた。

『新ちゃん、そんなに泣いてどうしたの?』

声が聞こえたあと、目の前に母さんが現れた。
おいで、と言う母さんに抱きつく。

『私に何があったか教えてくれる?新ちゃん』

俺の背中を撫でながら、優しく聞いてくれる母さんに俺は何があったのかを嗚咽を上げながら話す。

「俺っ、誕生日だったか・・・今日だけは会いたくて・・・うっ、うう・・・だから快斗・・ううっ・・・会いに行ったら・・・ひっく、女の人と・・・うう・・・」

『そっか、頑張ったね新ちゃん。辛かったのに、我慢して1人で死のうとまでして。
でもちょっとはママ達を頼って欲しかったなぁ』

『そうだぞ、新一』

母さんの後に聞こえた声は、父さんだった。いつの間にか俺の頭を撫でてくれていた。
優しい声に、余計涙が出てくる。

『ねぇ新ちゃん。多分だけど、快ちゃんは浮気してないわよ』

『あぁ。快斗君がつい最近家に挨拶に来たんだよ。
息子さんをくださいってね』

「えっ?」

『それでね、快ちゃんの隣で寝てた人ってのは多分快ちゃんの母親の千景ちゃんよ』

『布団かけてたから、勘違いしたんだと思うんだよ。胸のところから巻いてあるドレスを来てたんだね』

父さんと母さんが、いう言葉に驚いた。
確かに、快斗の隣で寝ていた女の人は布団をかけて寝ていた。快斗だってズボンだけはちゃんと履いていたし。

「じゃぁ俺の勘違いってことかよ。
でもどうしよう、俺もう」

『死んでないわよ』

『あぁ。快斗君が新一が目覚めるのを待ってる』

俺が父さん達に頷くと、眠気が襲って来て目を瞑った。



目が覚めた場所は病院だった。
首には包帯が巻かれているが、ちゃんと生きている。
ふとベットの脇を見ると、快斗が俺の手を握って寝ていた。
ずっと看病していてくれたのか、目の下には隈が出来ている。
顔色も悪いから、俺が目を覚ますまで何も食べていないのだろう。

快斗に握られている手はそのままに、反対の手で快斗に頬に触れる。
ずっと俺を看病してくれていたであろう快斗に感謝をしながら。
俺が快斗に触れると、快斗が目を覚ました。

「新一、目が覚めた?
良かった、新一が無事で」

快斗が涙を流しながら俺の無事を喜んでくれて、俺もつられて涙を流して感謝の気持ちを伝えた。

「ごめんね、新一。さみしい思いさせて、誤解させて。本当にごめん。
サプライズで新一の誕生日に、プロポーズしようと思って準備してたんだけど。誤解させたら、サプライズも何も無いよな」

再びごめん、と言う快斗に胸が痛くなる。
俺のために準備をしてくれてたのに。
そして、ふと病院の時計を見た。

「まだ、俺の誕生日終わってないだろ?」

「えっ?」

「プロポーズ、してくれるんだろ?」

俺が言うと、快斗が腕時計を見る。
そして、慌てて快斗がポケットから小さな白い箱を出す。

「新一、これからは2人で暮らそう?絶対幸せにするから。
俺と結婚してください」

プロポーズされるとわかっていても、快斗の言葉が嬉しかった。嬉しくて涙が溢れる。涙を流しながら、快斗に微笑み頷く。

「ありがとう、新一。
指輪嵌めるね?」

快斗が俺の左手をとって、指輪を嵌めてくれる。
指輪の感触が嬉しくて、左手を胸元に持っていく。
本当に嬉しくて、指輪を見ていると文字が書かれている事に気がついた。

「快斗、これっ・・・」

「気付いてくれたんだ!」

快斗が、眩い程の笑顔を向けてくれる。
指輪に書かれている文字は、K to S。つまり快斗から新一へと書かれていた。

「ちょっと外して、裏も見てみてよ新一」

快斗に言われて指輪を外して内側に書かれている文字を見る。

❮kaito❯

そう掘られてあった。

「新一は俺のものだっていう証なんだ。
俺の指輪にはshinichiってほってある。だから、俺は新一のものだからね」

俺は、快斗の指輪を見てみると本当に新一って書かれてあって、嬉しかった。
俺は指輪を嵌め直し、快斗の左手に快斗の指輪を嵌める。

「本当はさ、俺ちょっと不安だったんだ」

快斗がべットに腰を掛けて、俺の額に額を当てながら、話してくる。俺と同じように快斗も不安になってくれてた事にホッとした。
間近にある快斗の顔を見つめて話しを聞く。

「4年も離れて暮らしてたから、新一がプロポーズに答えてくれるかどうか、不安でたまらなかった。
新一が好きすぎて、不安だったんだ。
新一が良ければ、これにサインして欲しい」

快斗が渡してきた封筒の中には、The registration of a marriage・・・つまり婚姻届が入っていた。
片方の名前のところに快斗の名前が書かれていた。
証人の欄の所には、服部と白馬の名前が・・・。

「来月の21日に、結婚式を挙げようと思うんだけど、一刻も早く新ーと夫婦になりたくて」

「うん。えっと、ボールペンあるかな?」

「もちろん」

快斗が出してくれたボールペンを借りて、自分の名前を書き込んでいく。

「あっ、快斗印鑑無いんだけど」

「それも一応、新一のお母さんから借りて来たからあるよー」

ポケットから印鑑を出してくれる。
自分の名前の隣に、印鑑を押す。

「これでいいんだっけ」

「うん、じゃぁ明日ちょっとアメリカに行って提出して来るね。2日ほど、此処に来れないけど毎日電話するから」

「わかった。ごめんな?快斗に任せっきりで」

「それは気にしなくて良いの!
取り敢えず、新一は元気になって退院すること!それが1番大事だろ?」

快斗が俺の頬に口付けて言ってくれる。

「そいえば、蘭ちゃん。もう臨月だったんだね?」

「うん、そう見たいだぞ」

「今日、蘭ちゃんも陣痛が来て今産婦人科に入院してる」

「そっか。じゃぁもうすぐ産まれるんだな」

「そうだね!」

他愛のない話をしながら、俺達はいつの間にか寝ていた。



次の日、アメリカに一旦戻った快斗と入れ替わりで、服部と和葉ちゃん、青子ちゃんと白馬、それから少年探偵団の皆や灰原、阿笠博士が病室に来てくれた。

「黒羽に聞いて驚いたで工藤。大丈夫なんか?」

「あぁ、大丈夫だよ服部。証人のとこに名前書いてくれたんだな」

「おぉ、それか。黒羽に頼まれてなぁ。結婚式、来月やろ?」

「うん。色々ありがとな!」

「工藤くん、入籍おめでとう」

「ありがと、白馬。お前も証人のとこに名前書いてくれたんだな」

「あぁ、それかい?服部君と同じように黒羽君に頼まれたんで、断れなくてね・・・」

その後、和葉ちゃんと青子ちゃんもおめでとうって言ってくれた。少年探偵団の皆は、花束を持ってきてくれて、早く元気になってねっと渡してくれた。

「工藤くん、さっき蘭さんの所に寄ったら赤ちゃん産まれたって言ってたから行ってみたら?」

灰原が俺に耳打ちしてくれて、俺は蘭が居る病室に向かった。

俺は、蘭の病室に入ると、赤ちゃんをだっこした蘭とその夫の新出先生がいた。

「蘭、出産おめでとう」

「新一!ありがとう」

「新出先生、おめでとうございます!」

「ありがとう、工藤くん」

俺は、新出先生が座っている反対側の椅子に腰を掛ける。

「新一、抱いてあげてくれる」

「あぁ」

恐る恐る、という感じで蘭から赤ちゃんを受け取って抱っこする。
顔は蘭にそっくりだけど、眉とかは新出先生似かな。

「男の子か・・・」

「うん。だから、名前は新出快」

赤ちゃんを抱っこするのは初めてだったけど、俺の腕で欠伸をする快ちゃんを見てると、本当に可愛い。
きっと快ちゃんは幸せになるだろうな。
何せ、快斗の名前を貰ってるんだから。

「そろそろ、俺も病室に戻るな。
携帯置いたままだし」

蘭に快ちゃんを渡して俺は病室に戻った。
病室に戻ると、俺の携帯の着信が鳴っていた。

「もしもし」

『もしもし、新一?ついさっき婚姻届出したよ。これでやっと夫婦になれたんだね』

「そうだな!」

『そういえば、蘭ちゃんの子供産まれた?』

「うん。さっき抱っこして来た」

『そっか。そっちにいたら新一が赤ちゃん抱っこしている写真取りたかったなぁ』

「バーロー。二日後に帰ってくるんだろ?その時撮れば・・・」

『わかってないなぁ新一は。その時々によって全っ然違うの。表情とか抱っこの仕方とか、新一がどんな事を思ってるか、とかね!』

「っバカ!」

余りにも恥ずかしい事を言う快斗に、悪態付くと笑いながらごめんと言ってくる。

『そいえばね。新一が退院してから、俺の母さんと有希子さんと優作さんと一緒に食事する事に成ってるんだけど、大丈夫?』

「うん。快斗のお母さんとは会ってないもんな」

『うん、だからね。母さんが新一に会いたいって言って五月蝿いから』

「そうなんだな」

それから快斗と二時間程電話して、看護師さんに怒られたっけ。

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