マイフレンドB

□前編
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俺は工藤新一。日本で探偵稼業を行っている。
大好きな恋人とは離れ離れで暮らしているけれど、週に1回は電話している。

俺の大好きな恋人、黒羽快斗はラスベガスで奇術師として活躍している。キッドとして活躍していた頃からマジックが上手かったから、当たり前何だけどな。

けど最近、電話している時も何か素っ気ない。
電話が終わる時には必ず愛の言葉を伝えてくれるんだけど、な。
探偵として仕事している時は、頭の片隅に退けているけど、プライベートでは別。毎日快斗の声が聞きたいし側に居たいって思う。
そんな事言ったら重いって思われるんだろうけど、好きなんだから仕方無い。しかも快斗の声を聞いたら尚更・・・。

雑用をしている間、ずっと快斗の事を考えていると。

「新一、何ボケっとしてるの?
二時ぐらいに依頼人が来るんじゃ無かったっけ?」

「あっ、あぁ。分かってる」

こいつは毛利蘭。俺の幼馴染みであり初恋の人だ。
今は俺の秘書をしてくれていて、俺が快斗と付き合っているのを知っている人物だ。
去年の夏、新出先生と結婚式を挙げた。実は、今妊娠中で確かもう安定期に入ったって言ってたぞ。

「それより新一?最近何かあったの?
いっつも悩んでいる様な顔をしてるよね。
快斗君と何かあった?」

さすが蘭だな、全部お見通しって訳か。

「何かあったって理由じゃねぇんだけど・・・。
何か最近、快斗が素っ気なくってな」

「あの快斗君が?ちょっと有り得ないかも・・・。
でもどうしてそう思うの?」

「それがな、毎週1回は電話しているんだけどさ。
すぐ電話切ろうとするんだよ。俺的にはずっと電話していたいのに」

「ちょっと新一に似てるな、そういう所。私が電話していた時もそうだったじゃん」

「それはごめん」

「いいって。快斗君が好きなんだって1番最初に伝えてくれたし。それで吹っ切れたのよ!
それにね、新一。新一が好きな人と一緒にならないと、ダメじゃない。
私はずーっとそう思ってるよ?」

微笑みながら言ってくれた蘭に、感謝する。
蘭の言葉で、ちょっと吹っ切れた気がした。好きな人と両想いなんだから、それだけでいいじゃないか、と。

「そいえば蘭、赤ちゃんは順調なのか?」

「うん順調よ!智明さんったら毎日お腹の子に話しかけてるのよ?
早く産まれて来い≠ニか元気に育ってくれよ?≠ニかね!新一もちょっと触って見る?
最近良くお腹を蹴るのよ!」

「そうだな。じゃぁ触ってもいいか?」

「もちろんっ!」

そう言う蘭の言葉に甘え、蘭が座っている隣に腰を掛けて蘭のお腹を触る。

「此処にいるんだよな。蘭の子供が・・・。
産まれてきたら抱かせてくれよ?」

「当たり前でしょ?」

何て他愛のない話をしながら、蘭のお腹を触っていると、赤ちゃんが蘭のお腹を蹴った。

「今蹴ったな!」

「うん」

「そう言えば、もう名前は決まってんのか?」

「決まってるよ。
女の子だったら新ちゃん。男の子だったら快なのよ」

「それって」

「智明さんと相談したらね、新一くんと快斗君の名前を付けたいって言うから。
だから、新と快にしたの」

蘭の言葉に、少し感動した。子供の名前に俺の・・・いや、俺と快斗の名前を使ってくれる何て、嬉しいだろ。
今日、快斗との電話の時に話してみるか・・・。

「新一、もう少しで二時よ?準備しないと」

「そうだな」



そしてその日の夜。俺から電話を掛けた。
だけど十コール待っても電話に出てくれなかった。
何時もだったらこの時間だったら出てくれるのに。

どうして電話に出ないんだよ・・・。

携帯を見つめながら、不安になって来た。
快斗を疑いたく無いのに、嫌な方向にばかり思考が言行ってしまう。
壁に背中を付けて座り込んだ。
泣きそうに成りながら、だ。
いや、もう泣いている。涙が頬を伝うのを感じた。

それから十分して、やっと着メロがなった。
快斗が好きな、倉木麻衣のSecret of my lifeが。携帯を開くと快斗の顔が映っていて、俺は通話ボタンを押す。


「もしもし、新一?ごめんね、さっきまでショーをしててさ」

「ううん、快斗が忙しいのはわかってるからな」

「ありがとね」

「それでさ、快斗話したい事が・・・」

「ごめん、新一。ちょっと呼ばれたから行くね?」

言った後、すぐに通話が終了した。
結局言いたいことは言えず終いで、また快斗の方から電話を切った。
いつもこんなだ。何かと理由を付けて、電話を切られる。今日の電話が1番短かった気がした。

何でそんな早く電話を切るんだよ。
お決まりの愛の言葉だって言ってくれなかったし。
まさか、俺から気持ちが離れたのかな。
最近電話が終わった後、ずっとこんなことを考えている自分が嫌になる。
気が滅入ってしまってどうしていいかわからねぇ。

俺はどうしたらいいんだよ?快斗・・・。



次の日。
昨日泣きすぎて目が腫れてしまって、蘭に心配された。

「どうしたの?新一。その顔・・・。
まさか快斗君が・・・」

「何でもねーよ。昨日泣ける小説呼んでて目が腫れたんだよ」

「そんなわけないでしょ?推理馬鹿の新一がそんな小説読むわけ無いじゃない。
私が何年新一と一緒にいたと思ってるの?」

「・・・」

「新一の携帯、借りるわよ」

いつの間にか、俺の携帯を持っていた蘭が快斗に電話を掛けた。

「もしもし、快斗君?
どうして新一を泣かしたのよ。
はぁ?知らないで済むわけないじゃない。新一の顔凄く窶れてるのよ?
最近、新一が悩んでいたの知ってる?
昨日も最近の快斗君との電話が素っ気ないって悩んでたんだから。
何で付き合ってるのにその位察してあげないのよ!いくら忙しいからってね、新一と話す時間くらいあるでしょう?無かったら時間がある時に快斗君の方から電話掛けてあげれば良いじゃない。
自分の勝手で新一を振り回さないで」

蘭は言い切った後、すぐ通話終了ボタンを押して携帯を俺に渡してくる。
俺に携帯が帰ったきた瞬間、快斗から電話が掛かってきた。
通話ボタンを押して、電話に出る。

「もしもし」

「新一?ごめんね。昨日は・・・。
やっぱり怒ってるよね?」

「うん・・・」

「新一の事好きだからね?」

「俺だって快斗の事が」

「だからもう少しだけ待って?俺が3日・・・つまり新一の誕生日の前の日にそっちに行くから」

「わかった」

「じゃぁね」

電話が切れた後、少しは心が喜んでいる。快斗に会えると言う事がなにより。



そうして5月3日。
・・・結局快斗は来なかった。快斗によれば、今日急に仕事が入ったらしい。
俺はこれ以上快斗に会わなかったら、不安で押し潰されてしまうと思い、快斗に会うためにラスベガスに行くチケットをとった。
丁度GW中なので、仕事も休みだったから。
取り敢えず、蘭には電話をして伝えて置いた。

ラスベガスの快斗が暮らして居る自宅に着いて、合鍵で中に入る。
リビングには快斗は居なく、寝室以外のどの部屋にも快斗の姿は見えなかった。
最後に俺は、寝室を除く。

そこには、快斗の姿と・・・。
その隣に布団をかけては居るが裸の女性が・・・。

俺は驚いて手に持っていた快斗の好物のチョコケーキがは言っている箱を落としてしまった。
物音がして、起きた快斗が俺の顔を見て驚く

「何で新一が此処に・・・」

「それは、快斗に会いに来・・・」

最後まで言い切る前に涙が溢れ出し、俺は寝室を飛び出した。
追いかけてきた快斗に腕を掴まれる。

「新一、待てって。誤解だよ」

「誤解って何が、裸の女が隣で寝てて何もやってないって方が可笑しいだろっ。ふざけんなっ。
俺はお前が忙しいってゆうから、俺から快斗に会いに来たんだよ。それなのにっ、それなのにっ・・・っ。
快斗のバーローっ。」

次から次へ溢れる涙は止められず、変わりに俺は快斗に怒鳴る。大好きで、この世の誰よりも愛し、信じていた快斗に裏切られた事が、何よりも嫌でたまらなかった。


「新一・・・」

「俺に触るな。もう快斗とは終わりだよ。
世界で一番愛しているけれど、もう無理」

大好きだった快斗の頬に触れ、涙を流しながら最後に快斗に微笑む。
でももう・・・。

「さよなら、快斗」

俺は快斗に背を向けて、空港まで走った。


快斗に裏切られた以上、もう生きていけない。快斗がいない人生なんて、色褪せてる。
もう無理だよ、快斗。快斗の前では強がってたけれど、もう無理。
リビングにある包丁を使って、首筋に刃先を当てた。

さよなら、快斗・・・。

俺は、首筋をそのまま切った。

薄れる記憶の中、幻なのか快斗の声が聞こえた気がした。



快斗side

俺は、新一を追って日本に帰ってきて新一の家に入ると首筋から血を流して倒れている新一の姿があった。
手に包丁を持っているから、自分で死のうとしたんだろう。

俺は慌てて新一に駆け寄り、抱き上げて新一の名前を呼んだ。

「新一っ、新一っ!
死なないでよ、新一っ!」

必死にすがる思いで新一を抱き締めて何度も何度も新一の名前を呼んだ。

「どうしたの?快斗君っ・・新一っ、新一〜」

俺の声を聞きつけたのか、蘭ちゃんが居て・・・。

「蘭ちゃん。救急車呼んで・・・。じゃないと、新一が、新一が危ない」

「うん・・・」



それから、米花中央病院に運ばれた新一が手術室に入り治療を受けていた。
俺は、慌てていて新一の血がついた服のまま、ただただ新一の無事を祈っていた。
こんなことになったのは全部俺のせいだ。
新一を傷つけたから。勘違いだとしても、浮気を思わせることを俺がしたから悪いんだよな。
ごめん、新一。本当ごめん。
死なないでよ、新一っ。俺、何にもお前に話せてないだろ。本当は4日の、新一の誕生日に結婚しようと思ってたことだって。
新一を喜ばせようって黙ってたのが悪かったよな。本当にごめん。
最近忙しかったのもそのせいなんだよ。ごめんね、新一。
好きなんだよ、大好きで大好きで。

今日新一にプロポーズしたかった。

最悪の誕生日にしてごめんな、新一。

心の中で何度も何度も謝りながら新一の無事を祈った。


手術室から出てきた看護婦が俺に話しかけてくる。

「工藤さんのご家族ですか?」

「そうですけど」

「実は輸血の量が足りなくなって、工藤さんの命が危ないんです」

「じゃぁ。新一が助かるのなら、俺の血を使ってください。俺も新一と同じ血液型なんで」

俺は看護師に連れられて、新一の元に行って輸血してもらった。

やっと新一の手術が終わり、俺は新一の病室で新一を看病していた。
特別に個室になっているため、俺は付きっきりで新一を看病していた。

「新一、目ぇ覚ましてよ。伝えたい事がいっぱいあるんだから」

俺は新一の手を握り、祈った。
このまま、新一が死にませんように。
新一が目を覚ましますように。

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