マイフレンド C
□A
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大学生活が始まり、久々に服部に会った。
「よぉ工藤!」
「あっ、服部。久しぶりだな」
今年、服部も東都大学に合格して、見事俺達は同じクラスになった。
久々に顔を合わせて、挨拶を交わす。
「そいやぁ工藤。お前今年から家離れてシェアハウスに住むことになったんやろ?」
「おう。服部もこの春から東京に来たんだってな」
「そやでー。大阪から毎日通うのもめんどくさいしなぁ」
相槌を打ちながら、他愛のない会話をする。探偵として仲良くなり、今は親友として仲がいい服部とは話が弾む。
今日は入学式で三時間で学校から帰れた俺と服部は、俺の実家に訪れていた。まだ売り払っていないため、家具とかもそのまま。
それはいいとして、俺の実家に来たのは俺が服部に相談するためだったのだ。
恋愛の事を服部に話すのは答えが欲しいからじゃない。取り敢えず誰かに聞いて欲しかった。
「んで?工藤の相談っちゅーのはなんなんや?」
「実はな・・・」
アイスコーヒーを服部に渡して、本題に入る。
服部は俺が愛した人を失っているって知ってるから、シェアハウスで知り合って拒む間もなく惹かれてしまった赤井さんの事を話す。
「工藤が恋愛に臆病になっとるっちゅーのはわかっとったけど、そんなにとはなぁ。
その赤井さんに、惚れたんならもっかい好きになってもえぇんとちゃう?」
「それはそうだけど・・・。赤井さん、FBI捜査官だからまた俺を置いて松田さんみたいに・・・。
そうなったら俺、今度こそ立ち直れねぇよ」
溢れてきた涙を拭きもせず、俺は服部にいう。
「そら俺だってよー分かっとる。工藤が松田っていう人が死んだ時、後追おうとして自殺しようとしたのも知っとる。でもな、工藤。赤井さんっつー人が松田さんと同じように死ぬとはまだわからんやろ?
やから工藤、もういっぺん勇気出して赤井さんに惚れてみ?
それでも、もう惚れとーない。恋しとー無い言うんやったら、そうしいや。俺ももう、止めやせん。
もし、思い切って惚れてみるっていうんだったら応援するで。なっ?」
服部に聞かれ俺は頷くと、抱き締めてくれる服部の腕の中で泣いた。
思いっきり泣いて、胸のつっかえが取れた俺は服部に礼を言い、水で顔を洗った。
鏡を見て笑った俺は、スクールバックを持ち工藤家を出てシェアハウスに帰った。
「ただいま・・・」
シェアハウスに入り、靴を脱ぎながらただいまと言うと、黒羽が出てきた。
「おかえり、工藤。遅かったなぁ」
「ちょっと、友達と会ってたからな」
「そっか。あっ、工藤。今日、友達来てるんだけど」
黒羽がそういった後、リビングから出てきたのは、よく見知った人物が2人、あと知らない人物が二人いた。
「蘭に園子じゃねぇか。久しぶりだな」
「あっ、新一。久しぶり・・・。どうかしたの?泣いた跡があるけど」
俺に近づいてきた蘭が、俺がさっきまで泣いていた事に気づく。幼なじみなだけあって、ちょっとした変化にもすぐに気づく蘭はすげぇと思う。
「すげぇな、蘭。俺、鏡みても気づかなかったんだけど」
「気付くに決まってるでしょ。何年一緒にいると思ってんのよ」
「だな。でも今日は、気づいて欲しくなかったな」
蘭に微笑みながら言う。その様子を見ていて、いつもは冷やかす園子も今日は黙り込んでる。ほんとにひでぇ顔してんだろうな・・・。
「新一、詳しく事情を聞かせてくれる?新一を泣かせるなんてサイッテーなことした相手の首根っこ引っ捕まえて来るから」
指を鳴らしながら言う蘭に、俺は笑った。久々に笑った俺を見て、黒羽達が息を飲んだ。
「やっと笑ったね、新一。でもやっぱり、理由は聞かせてもらうよ?
新一の部屋で話そう」
微笑んだ蘭に言われて、一緒に自室に行った。もちろん二人で。
「それで、何があったの新一」
「実は・・・。
蘭も知ってるよな、俺が愛した人を失った事」
「うん、知ってる。新一が自殺しようとしたのを必死に私が止めたんだもん。忘れるわけないじゃない」
「そうだよな。俺、その時に決めたんだ。もう2度と恋なんてしねぇって。人を好きになりたくねぇって。
でも、このルームシェアハウスに来て赤井さんに惚れちまって・・・。どうしたらいいのか全然分かんなくなって、服部に相談したら。
『もういっぺん、惚れてみろ』って言われて励まされて、気付いたら泣いてたんだ」
「そっか。それで新一が納得したんだったら良かった。
よく頑張ったね、新一」
よしよし、と言うように頭を撫でられ俺も安心した。気を抜いたら泣いてしまいそうなくらい。