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□抱き締めて
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授業終わり、談話室へ向かう途中

愛しの彼と、ジェームズの話し声が聞こえて立ち止まる。






「…だろ、…なんでだ?」

「…わかるか?シリウス。
リリーは、本当に綺麗なんだ」


「わかんねえな。
俺は、恋愛とか…面倒なわけよ」

「お前、あいつと付き合ってるんだろ?」



" 恋愛が面倒"
聞こえてきた言葉に耳を塞ぎたくなった。

後ろへ下がれば パキ、と木の枝が鳴る。


此方へ向かってくるジェームズを背に、
私は、元来た道を走り出した。





―――――――




「…!おい、シリウス!ハナだったぜ?」


「ああ。放っとけ」


彼女が去った方を見て、シリウスがニヤリと笑う。


「まさか、ハナがいるって知ってて…」

「だったらなんだ?」


片方の口角を上げて笑う親友が
わからなくなった僕は頭を抱えた。




――――――――






「リーマス、ここがわからないの。教えて」

「ああ、これはね…」



変身術の授業が終わってから、彼女がおかしい。


普段なら、シリウスの後を追うのに
今日に限っては、僕の後ろをついて歩くのだ。


「ハナ、どうしたんだい?
シリウスと喧嘩でも…?」

「…ねえ、そろそろ夕食の時間よ!」


僕の問いかけに、一瞬暗い顔をしたけれど
すぐに笑顔に戻って、僕の背中を押す。


「リリーも、夕食行きましょ」

「え、あ、うん?」


そんなハナを不思議に思ったらしいリリーが
シリウスと、ジェームズを振り返る。

苦笑いを溢すジェームズの隣にいるシリウスは
とても機嫌が悪そうだ。




――――――



「ハナ、止まりなさい」

「…リリー、」


リリーが私を止める。
振返り彼女の顔を見て、涙が出そうになった。


「どうしたの、ハナ…
あいつに、何かされたの?」

「…シリウスが、わからない」


堪えきれずに泣き出す私を支えるリリーが
怒りで震えている。


「リーマス!ハナの傍にいて!」

「あ、ああ。」

「っ、リリー、だめ」


私の制止も聞かず、リーマスに私を預けた
リリーはシリウスの元へ向かう。



「あんたは何をやってるの!」


談話室から廊下まで筒抜けなリリーの叫び声に
リーマスが苦笑いする。


「優しい、親友だよね」

「ええ、リリーは…私の自慢よ」


嬉しくて笑う私の頭をリーマスが優しく撫でる。
少しすると、元凶が走ってやってきた。



「リーマス!その手をよけろ!
ハナ…俺は、別れるつもりは毛頭ない!」

「…は?」


きょとん、とする私たちの元へ
リリーとジェームズが歩いてくる。


「あー、…来い、ハナ」

「っ、」


ぐい、と手を引かれて、彼の腕のなか。


「良いか、1度しか言わねえぞ。」

「え、あ、」

「俺は、好きでもないやつと付き合うのは
もうやめたんだ、わかるか?」

「…?」


首を傾げる私に、シリウスが呆れたように言う。



「あーくそ…好きだ、つってんだよ」

「………っ、!」


後ろには、ニヤニヤと微笑む親友たち。



抱 き 締 め て

(( 鼻に掠るは、彼の香り。 ))


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